サイバーエージェントとDMMがアニメに本気
また、独自の配信メディアを持つ有力企業に、DMMとサイバーエージネントがある。いずれもがここ数年、アニメビジネスへの意欲を隠さない。アニメ事業拡大も明言する。
DMMは2022年にアニメ企画・製作に特化したコンテンツクリエイティブ本部を設立し、製作出資にも積極的だ。サイバーエージェントも2024年2月にアニメ&IP事業本部を立ち上げた。
両社に共通するのは、IT事業を軸とした経営に強みがあることだ。番組視聴に限らず、最新情報を得たりコミュニケーションしたり、アニメファンの活動はいまネットに大きく傾いている。
この傾向がさらに続くなら、ITビジネスのノウハウやユーザー動向を熟知した両社の優位は高い。何よりも現在のアニメ製作で鍵となる豊富な資金を持つことが大きい。大型投資にも躊躇(ちゅうちょ)がない。
実際、サイバーエージェントは昨年7月に169億円をかけてゲーム会社ニトロプラスを買収した。ニトロプラスは『刀剣乱舞』や『魔法少女まどか☆マギカ』、『Fate/Zero』といった人気アニメの知的財産(IP)も生み出してきた有力会社だ。
また、サイバーエージェントは製作委員会への出資はもとより、オリジナル企画の開発やライセンスマネジメント、海外ビジネスも視野にいれている。ゲームなどクロスメディアも得意とするところで、IPの獲得に力を入れアニメ事業を拡大してく構えだ。。
さらにいま注目されるのが、アニメーション制作そのものへの進出である。
DMMは2023年にCUEを、サイバーエージネントは今年1月にCA Soaを設立した。アニメスタジオの新設は資金力だけでは不十分で、制作スタッフや優れた企画を集めるための人脈が必要だ。とりわけいまアニメ業界は空前の人材不足、異業種参入のハードルは高い。
DMMはそれを老舗スタジオのプロダクションI.Gから、サイバーエージェントはバンダイナムコフィルムワークスからベテランプロデューサーを引き抜き社長に据えた。短期間でアニメビジネスをフルラインで揃えるDMMとサイバーエージェントは、今後さらにアニメ業界で存在感を増しそうだ。
数土 直志(すど・ただし)
ジャーナリスト。国内外のアニメーション関する取材・報道・執筆を行う。また国内のアニメーションビジネスの調査・研究をする。「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。大手証券会社を経て、2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」、その後「アニメ!アニメ!ビズ」を立ち上げ編集長を務める。2012年に運営サイトを(株)イードに譲渡。2016年7月、イードを退社。