記者会見の場で握手する日本テレビの杉山美邦会長(右)と、子会社になることが決まったスタジオジブリの鈴木敏夫社長=21日、東京都小金井市(写真:時事)
  • 日本テレビ放送網がスタジオジブリを子会社化する。宮崎駿氏や鈴木敏夫氏は取締役として残るが、日本を代表するアニメスタジオの一時代が終わる。
  • SNSなどでは日本テレビ傘下の動画配信サービス「Hulu」でのスタジオジブリ作品のネット配信を期待する声が上がる。だが、株主構成や権利関係は単純ではなく、ことはそう簡単に進まなそうだ。
  • 日本テレビは他のアニメ制作会社にも出資をしてきたが、十分な成果を出せていない。スタジオジブリの出資を機に、アニメ事業をさらに伸ばしていけるだろうか。

(数土 直志:ジャーナリスト)

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 日本、そして世界のアニメーション業界を驚かせるニュースが、9月21日に飛び込んできた。大手放送局の日本テレビがアニメ制作会社スタジオジブリの株式を取得、子会社化すると発表した。

 日本テレビは新たに株式を取得することでスタジオジブリの議決権所有割合42.3%を持つ筆頭株主になる。さらに同社がスタジオジブリの経営をサポートする契約を締結し、子会社化する。日本テレビからは、代表取締役社⻑となる福田博之氏を含めて取締役、監査役の計4人の役員が派遣される。

 宮崎駿氏、高畑勲氏の監督作品をはじめ世界的な劇場アニメのヒット作を数多く生みだしてきたスタジオジブリだが、その経営体制は大きく変わることになる。巨大メディア企業と日本を代表するアニメスタジオの統合は、アニメ業界へのインパクトも大きい。

 サプライズはあるが、スタジオジブリの選択は、同社の現状と今後を考えると納得いくところが大きい。

 ひとつは創業者の高齢化だ。『千と千尋の神隠し』や『となりのトトロ』など多くのヒット作を監督してきた宮崎駿氏は今年82歳、代表取締役社長でプロデューサーでもある鈴木敏夫氏は75歳だ。

 スタジオジブリは過去にたびたび宮崎駿、高畑勲以外の監督を登用してきたが、その多くは外部に活躍の求めることになった。さらに2014年に制作部門を一度休止したことで、多くの制作スタッフ・プロデューサーがスタジオを離れた。クリエイティブ、経営の両方の継続において、将来展望が必要とされていた。