『君たちはどう生きるか』は公開から1カ月近くが過ぎたが、いまだに予告編などはなく情報の非公開が続いている(写真:ロイター/アフロ)
  • スタジオジブリの新作長編アニメ『君たちはどう生きるか』が公開されて1カ月近くが過ぎた。
  • 予告編だけではなくあらすじなど全ての情報の非公開が続くなか、作品の謎解きなどでファンは盛り上がる。一方、興行成績はこれまでのジブリ作品ほどの勢いはない。
  • 情報非公開という新手法が試された背景には、日本のアニメ界における「ジブリ1強」の終焉やネット配信の台頭などの変化がある。そして、ジブリ自身も変革を迫られている。

(数土 直志:ジャーナリスト)

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 宮崎駿監督の最新長編アニメ『君たちはどう生きるか』が、7月14日に公開されてほぼ1カ月。「宣伝しない宣伝」と話題になった本作に関する情報はメディアへの非公開が続いている。予告編はもちろん、あらすじ、本編ビジュアル、キャラクターなどは一切明かされていない。8月11日から劇場パンフレットの販売は始まるが、劇場を訪れない人とっては『君たちはどう生きるか』は、いまでも謎の作品だ。

 一方、すでに鑑賞した人たちからは様々な意見が飛び交い、かんかんがくがくだ。「内容が理解できない」といった否定的なものから、映像やイマジネーションの素晴らしさを絶賛するものまで、評価はかなり分かれている。

 なかでも盛り上がりをみせるのが、作品の謎解きだ。本編で説明されていないことも多いことから、登場キャラクターを宮崎駿監督自身や周辺人物に見立てて、作品の意味や監督の意図を読み解く。監督がそれを狙ったとは思えないが、映像から作品の背景を探るのも、映画の楽しみ方の一つである。その意味では『君たちはどう生きるか』は成功したと言っていいだろう。

 本作が話題になる一方で、いよいよ気になってくるのがこれからの宮崎駿監督、そしてスタジオジブリの今後である。『君たちはどう生きるか』の中にはこれまでの宮崎作品からの多くの引用があるとして、本作を「宮崎駿の集大成」「今度こそ最後の映画」と喧伝する向きもある。

 しかし、本当だろうか。『君たちはどう生きるか』は集大成というよりも、むしろいつもの宮崎駿監督のやり方が目立った。過去の作品をほうふつさせるのは、宮崎駿監督のイマジネーションがこれまで通りにあふれ出しているからである。つまりは「いつも通り」なのである。