昨年、ソニーグループがKADOKAWAを買収するとの報道が流れ注目を浴びた(写真:ロイター/アフロ)

日本のアニメ業界で世界市場を睨んだ主導権争いが激化している。ソニーグループのKADOKAWA買収は幻となったが、ネットフリックスなどグローバル配信大手の存在感が薄れるなか、テレビ局やサイバーエージェントなどがアニメ事業にアクセルを踏み、世界市場の争奪戦が繰り広げられている。

(数土 直志:ジャーナリスト)

M&A相次いだ2024年のアニメ業界

 2024年の日本のアニメ業界は、激動の年だった。いくつものアニメ関連の大手企業が事業拡大を掲げ、それはM&Aの急増というかたちで表れた。

 とりわけ目立ったのがアニメスタジオの買収だ。

 昨年3月にバンダイナムコホールディングス(HD)傘下のバンダイナムコフィルムワークスがエイトビット、5月に東宝がサイエンスSARU、7月にKADOKAWAが動画工房と相次いで有力アニメスタジオを子会社化した。それぞれが『ブルーロック』、『ダンダダン』、『【推しの子】』といった大ヒットタイトルを制作する会社である。

 企業買収の対象は海外にも広がる。東宝は米国アニメーション映画配給GKIDSを買収、完全子会社化するとして世界の映画業界を驚かせた。北米のアニメ映画ビジネスの足掛かりを築く。

 とりわけ大きな話題となったのは、年末にソニーグループがKADOKAWAの買収を検討中と広く報じられたことだ。いまや世界最大のアニメ事業を抱えるソニーと、年間40タイトル以上のアニメを製作しソニーのアニメ事業に匹敵するKADOKAWAが統合すれば、アニメ業界に圧倒的な巨大企業が誕生すると業界は色めきたった。

 結局、ソニーグループはKADOKAWAへの追加出資により10%程度の株式を保有する筆頭株主となるにとどまったが、現在のアニメ業界の激しい動きを象徴する出来事だった。