膨大なエネルギーを必要とする自動車製造の「不都合な真実」

 C40は全長4440mm×全幅1875mm×全高1595mm、車両重量2000kgのBEV。バッテリーパックの総容量は73kWhで重量は400kg。そのC40は、資源採掘、輸送、精錬、部品加工、組み立てまでクルマが生み出されるまでの全てを網羅すると、CO2換算排出量は26.4トンになるという。その内訳は30%がアルミニウム、28%がバッテリーパック、19%が鋼板。この3要素で全体の77%を占める。

ボルボ「C40」ボルボ「C40」

 BEVは大型バッテリーパックを積むためそのぶん換算CO2排出量も大きいものになっているが、最大排出源であるアルミニウムは普通のクルマでもエンジンや変速機のケースなどに多用しているし、ストロングハイブリッドカーなら重量にしてBEVの5分の1から3分の1程度のバッテリーぶんが加わる。C40と同クラスのハイブリッドモデルの換算CO2排出量は20トン前後になると推計される。

 クルマの製造がここまで膨大なエネルギーを必要とするというのは、自動車メーカーにとっては不都合な真実そのものだ。

 クルマの環境負荷を計算するライフサイクルアセスメント(LCA)の研究は古くから世界中で行われていたが、過去に自動車メーカー各社が提示したデータを見ると、クルマの製造時に出るCO2はごくわずかで、走行時の排出が大半と主張するものがほとんどだった。燃費向上や電気エネルギー利用を進めれば、クルマの環境問題の大半は解決できると考えられたゆえんである。

 しかし、CFPベースでみると話はまったく違ってくる。C40の換算CO2排出量26.4トンはレギュラーガソリン約1万1500リットルを燃やすのに匹敵する。同格のハイブリッドSUVの20トンでも約8500リットル。消費燃料1万リットルは燃費20km/リットルのクルマを20万km走らせられる、膨大なエネルギーだ。

ボルボ「C40」ボルボ「C40」

 製造時の温室効果ガスの排出量が多いモデルの場合、ハイブリッドカーであれBEVであれ、走行時のCO2排出量が少ないとしても、それで簡単に取り返せるものではない。従来型のLCAではクルマの省エネ技術の向上が環境対策の主役だったが、CFPにおいては製造時の換算CO2排出量の絶対値をいかに抑えるかが重要となる。

 自動車産業は決して今まで製造時のCO2排出を野放しにしてきたわけではない。日本では2003年に自動車の再資源化に関する法律が施行され、20年以上にわたってリサイクルの実績を積み上げてきた。鉄鋼メーカーはリサイクル鋼の技術進化を継続的に行っており、最近では比較的低スペックなものであれば高張力鋼板も作れるようになってきた。

 それを受けて自動車メーカーはCO2排出量の多いバージン鋼(鉄鉱石から新規で精錬した鋼材)の比率を下げるのに躍起だ。そんな努力を払ってもなお大量の温室効果ガス排出をなかなか止められないのが自動車製造というものなのだ。