ウクライナ経済の不調が続いている理由

 ロシアによる攻撃を受けて、ウクライナの工業力は急減している。ゆえに、軍需品の需要が急増しても、それに対応できる能力が国内の製造業にはない。さらに、そもそもウクライナの軍需品は米欧から供給されている。つまり、ウクライナには、ロシアのような軍需品の増産圧力が国内の製造業を動かすメカニズムは存在しないのだ。

 欧米からの支援があるとはいえ、ウクライナ経済がロシア以上に疲弊していることは確かである。このこともまた、ウクライナで厭戦機運が高まる背景の一つといえよう。

 既にウクライナとロシアの戦争は3年近くが経過しており、双方の社会経済は疲弊している。そうした中、米国で停戦に向けた仲介に前向きなドナルド・トランプ元大統領が1月20日に再就任することもあり、年内に停戦が実現する可能性が強く意識されている。そうなると、ウクライナの復興需要が必然的に注目を浴びることになる。

 ここで、欧州委員会が2024年11月に示した最新の「経済見通し」を確認すると、ウクライナの経済成長率は2025年が2.8%増に低下する一方で、2026年は5.9%増まで急上昇する(図表2)。

【図表2 欧州委員会による経済見通し(2024年秋)】

(出所)欧州委員会経済・財政総局(ECFIN)(出所)欧州委員会経済・財政総局(ECFIN)
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 こうした予測にも、暗黙のうちに復興需要が織り込まれているものと考えられる。実際、欧州連合(EU)はウクライナの復興に多額の援助を行う予定だ。