独仏の落ち込みをカバーする復興需要

 ウクライナの復興需要は周辺の諸国にも波及する。

 EU加盟国でウクライナと国境を接する国はハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの4カ国だ。特にポーランドとルーマニアは、ウクライナ復興需要の恩恵を強く受けると期待されている。加えて、EUと対立するハンガリーを除く3カ国には、EUから多額の資金が配分される。

 実際に、ウクライナ復興需要とEUからの資金配分という2つの要因もあり、ウクライナと国境を接するEU加盟国には、EU中からヒト・モノ・カネが集まっている。今後は、この流れがさらに加速すると予想されている。独仏の二大経済が不安定さを強める中で、ウクライナの復興需要がEUの経済成長をけん引すると期待される。

 ウクライナの供給力は、これまでの戦争を受けて著しく低下しているが、復興期におけるウクライナの需要は急激に盛り上がる。そのため、ウクライナのインフレは急激に加速するだろう。高インフレを放置すれば実質所得は目減りし、復興の妨げになる。供給はすぐには増えないから、金融引き締めで需要を抑制する必要がある。

 それに、為替レートを安定化させるためにも、金融引き締めは必要である。

 利上げで為替レートが安定化すれば、輸入の増加を通じて総供給を拡大させることができる。為替レートの安定が復興期の経済にとって重要なことは戦後の日本やドイツの経験が雄弁に物語るし、また計画経済から市場経済への移行を図った中東欧の国々にも共通する。

 筆者はかつて、ウクライナの通貨の安定を考えた場合、極めて強固な固定相場制度であるカレンシーボード制に基づき、EUの通貨であるユーロとウクライナの通貨であるフリヴニャを固定することも選択肢だと主張した。

 ウクライナ国立銀の金融政策運営から政治性を排除するためにも、この選択肢がベストであるとの見解は今も変わらない。