リテール業務のファクトリー化
英国人の現役銀行マンの友人に「いったいあれらの銀行は何を考えているのか? まるでネット専業銀行化しようとしているように見える」と訊くと、「銀行取引をコモディティ化(標準化)して、ファクトリー(工場)みたいに顧客を捌いていくつもりなんだろう。対面でサービスを受けたいなら、別の銀行に行くしかない」と言われた。
もちろん富裕層は別で、どこの銀行も営業担当者を張り付け、囲い込みを図っている。多少極端な言い方だが、金持ちは大事にし、貧乏人は切り捨てるということだ。
一方で英国では、対面での接客を重視する戦略の銀行もある。2010年に開業したメトロ銀行は英国内に75の支店を有し、支店内には入出金窓口の他、相談用のブースを多数設け、しかも土日も営業している。
またスウェーデン系のハンデルスバンケンも英国内に200以上の店舗を有し、顧客対応重視のスタイルをとっている。こちらはプライベート・バンク的な営業で、顧客はある程度まとまった額の取引を求められる。筆者の友人の英国人の銀行マンは富裕層ではないが、この銀行と取引しており、「取引を始めるとき担当者が家まで来た(注・銀行の担当者が富裕層ではない顧客個人の家を訪問するのは日本以外ではほとんどない)。最初、口座を開設したときは口座維持手数料をとられたけど、彼らにとって儲かる住宅ローンを借りたら、口座維持手数料はなくなった」と言う。
今回の事件を契機に、筆者は、邦銀のリテール業務のファクトリー化がますます進むだろうと懸念している。