7.キャスティングボートの行方

 こうして見てくると、総選挙を経て国民民主党が掌握したキャスティングボートの行方、つまり優先交渉権の行方は、来年度予算案が採決される2月末あるいは3月上旬までもつれ込むだろう。

 前原誠司共同代表が障害となって、日本維新の会と国民民主党との共闘も成立しないし、7月の参院選に向けて両者の競争は、激しさを増すばかりだろう。

 もちろん、玉木雄一郎氏率いる国民民主党が掲げる高いボールを与党が受け止めきれず交渉が決裂し、日本維新の会が教育無償化に係る一定の成果を得て与党自民党公明党と来年度予算案を可決するというシナリオも十分に考えられる。

 しかし、日本維新の会の迷走ぶりを見ていると、政府与党も維新と交渉することのリスクにコンシャスにならざるを得ないだろう。すべての交渉が破綻し、野党が一丸となって内閣不信任決議案を可決し解散総選挙に突入する可能性だって完全に排除されるものではない。

 まさに日本政治は「乱世」の真っただ中にあるのだ。

 本稿では、ゲーム理論を援用しながらキャスティングボートの行方について論じてみたが、最後に強調しておきたいことは、民主主義下にある政党政治を最終的に決するのは、理論ではなく民意だということである。

 その民意は、選挙で示される。当面の最大の選挙は2025年7月の参院選。

 参院選に向けて、与党自民党と公明党、野党第1党立憲民主党、キャスティングボートを争う日本維新の会と国民民主党、そして躍進した小政党たちが、しのぎを削って国民の支持を取り合う。政策を実現する競争の幕は、既に切って落とされたのである。