6.一貫性を欠いて迷走する日本維新の会

 確かに、囚人のジレンマを解決するには、協力とコミュニケーションを促進することが有効である。しかし、日本維新の会の考え方、そして橋下理論には、日本維新の会と国民民主党とが協力すれば双方の利得を最大化できる、という大前提があるが、本当だろうか。

 繰り返しになるが、2025年7月には参院選が控えている。先の総選挙を経て始まった「新しいゲーム」は、2月末から3月にかけての来年度予算案の採決で終わる話ではない。むしろ、参院選、そして次の解散総選挙へ、野党間の競争もますます激化をしていく。

 そうした中で、国民民主党が優先交渉権を保持しているからといって、維新と協力しようとしないのは「(囚人の)ジレンマ」に囚われている、自党の利得しか考えていない等と国民民主党を非難するのは、それはそれで無理があろう。

 基礎控除の引き上げには日本維新の会も賛成だと明言しているのだから、維新も自党の掲げる政策にこだわらず躍進した国民民主党の政策を実現するために全面協力すればいいだけなのだ。

 更に、日本維新の会最大のミスは、吉村新代表が国会議員団の代表=共同代表に前原誠司氏を据えたことだった。前原氏は、2023年9月に行われた国民民主党代表選に出馬し玉木氏の党運営を厳しく批判したが、結果は惨敗。ノーサイドと言っていたにもかかわらず前言を翻し離党、教育無償化を実現する会を経て日本維新の会に合流したばかりだった。

国民民主党の代表に再選され、前原誠司氏(右)と握手する玉木雄一郎氏=2023年9月2日午後(写真:共同通信社)国民民主党の代表に再選され、前原誠司氏(右)と握手する玉木雄一郎氏=2023年9月2日午後(写真:共同通信社)

 囚人のジレンマを解決する手段は協力と書いたが、信頼関係あってのこと。いつ裏切るか分からない前原氏を国会代表に据えた日本維新の会を「信用せよ」という方が土台無理な話なのだ。

 日本維新の会の一貫しない態度は、他にもある。

 吉村洋文代表は、日本維新の会と大阪維新の会、そして大阪府知事という「三足のわらじ」を履くに当たって、大阪都構想の実現に向けて三度目の住民投票にチャレンジする意向を表明した。

 しかし、いわゆる大都市法に基づく住民投票を実施するためには大阪府議会及び大阪市議会で過半数を要するのに、先の総選挙で維新は公明党の選挙区に候補者を擁立し、思いっきりケンカを売ったのだ。

 もう二度と公明党の協力を得られないようにしておきながら、大阪都構想に三度チャレンジしたいというのは、どういう了見なのか。自ら進む道を狭めた吉村維新にとって残された選択は、大阪関西万博を終えたあと都構想三度目の挑戦を掲げて大阪ダブル選挙に打って出るウルトラ技しかない。

 大阪府議会及び大阪市議会で過半数を維持している間に法定協議会を開催し改めて設計図をオーソライズし、2027年統一地方選挙に合わせて三度目の住民投票を実施するという強硬策しか残っていない。大阪維新の会内部からも吉村さんは死に場所を探している、三度目の住民投票が「墓場」になる、といった声が出る所以である。