意外にも実現性ある、トランプのパナマ運河奪還やグリーンランド購入
狙いはずばり米国の庭を荒らし始めた中国、習近平の一帯一路に照準
2024.12.29(日)
高濱 賛
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アラスカを720万ドルで買った実績
「中国の脅威」が叫ばれて久しい。
ジョー・バイデン大統領は口先では威勢がいいが、いざ行動となると、どこか腰が引けていた。「妥協すべき分野での協力」ばかりが目立った。
ところが、トランプ氏は言うことは言い、やると決めたら実際にやる。そこが外国首脳たちを脅かす。
パナマ運河奪還とともに声高に言い出したのが、グリーンランドの買収構想だ。
985年、ノルウェー人のバイキング、「赤毛のエイリーク」が発見した世界一大きい島、グリーンランドの人口は5万6600人(うち先住民イヌイットは1万9600人)。
ノルウェーがデンマークと同じ君主国だったことから18世紀初頭から1979年まで強国デンマークが統治権を堅持してきた。
1979年に住民投票で自治領となったが、外交、国防、国家安全保障は依然としてデンマークが握っている。
米国は現在、ピツフィック宇宙軍基地に米空軍、宇宙軍飛行中隊、支援中隊、警護中隊、警戒中隊など合計650人を駐屯させている。
中国はここ最近、北極への進出を活発化、一方、ロシアによる原子力潜水艦の北極海での動きも目立っている。
特に、中国は「北海ルート」(North Sea Route=NSR)経路を「北極シルクロード」の一環と位置付けている。
すでに科学調査や砕氷船の派遣、北極圏諸国との接触など活発化させている。2025年までに北極海底探査を実現するともいわれている。
北極圏をめぐる米中のヘゲモニー争いはいやが上にも激化する。トランプ氏がグリーンランド買収に大真面目なのが分かるというものだ。
トランプ氏はグリーンランド買収について「米国家安全保障と世界の自由のために必要だ」と強調している。
他国の土地を買収することは、米国にとってはアラスカをロシアから729万ドルで買ったこともあり、前例がある。
アラスカ買収時(1867年)には米国民の多くは、年中氷漬けで使い途のない土地を買うことに反対していた。
ところが今や、米国とアジアを結ぶ航空路の中継地として、また埋蔵されていた石油・石炭・天然ガス、鉱物がいかに米国を支えているか、安全保障上の重要拠点となっているかを考えると、実に安い買い物だった。
グリーンランド買収がアラスカ買収と異なるのは、売り手だ。
ロシアは当時、クリミア戦争で負け、財政事情が逼迫、下手をすると英国がアラスカを奪取するのではないかという状況下にあった。
それに比べると、デンマークは小さいながらも一人当たりGDP(国内総生産)は世界でもトップレベル。
スカンジナビア情勢に詳しい米シンクタンクの上級研究員はこう見ている。
「スウェーデン、ノルウェーが、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえて相次いで北大西洋条約機構(NATO)に加盟している昨今、NATOの原加盟国であるデンマークがグリーンランドを米国に売り渡す可能性は十分ある。条件次第だ」