ヤマハと組んで刷新した「世界観」

 走りの質感が上がったことで、車内でのオーディオ鑑賞の感性が際立ったのだ。

 手を組んだのが、ヤマハだ。

 新型アウトランダーPHEVは、4つのグレードがあるが、最上位のP Executive PackageにはDynamic Sound Yamaha Ultimateを、さらに、Pグレード、Gグレードではオプション設定が可能。また、同PremiumはP、G、Mそれぞれのグレードに標準装備する。

ヤマハのプレミアムオーディオの効果を示す資料。投影されたプレゼンテーション(写真:筆者撮影)
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 プレミアムブランドでは、上級オーディオシステムを組み込む事例は少なくないが、三菱としてもブランド価値をさらに一歩引き上げるためには、車両開発の初期段階からオーディオメーカーと深く連携する体制を敷いた。

 三菱の開発担当者によれば、ブランド戦略の中でオーディオのあり方を抜本的に見直すことからスタートし、オーディオメーカー各社との専用オーディオ開発について協議した結果、ヤマハと歩調が合ったという。

Aピラーに組み込まれたヤマハオーディオシステムの一部(写真:筆者撮影)

 技術面では、原音に忠実な、解像度の高い『いい音』を実現するために、中高音にこだわったツィーターを採用。内部構成品では、マグネットを大型化して駆動力を上げ、また振動部を軽量化するためにアルミを主としてコイルを用いた。

 また、中低音についてはウーハーで、駆動力を上げつつ、無駄なピークを持たない大出力で締まった低音を実現。さらに、コイル径を拡大して放熱性も上げたことで、大出力化に適合させた。

 こうしたオーディオシステムの改良に対して、車体側も「音」にこだわった改良を施している。

 例えば、オーディオパーツを装着するドアパネルの補強パーツを大型化して、溶接部分もスポットを増したことで、先代モデル比でパネルの剛性を1.5倍に上げている。

 また、ドアパネルには補強材と制振剤を追加してパネルの音の発生を抑制したり、ドアパネルの作業穴を塞いだりしたことでスピーカー後方から出る音を遮断している。

 さらに、エンジンではジェネレーター(発電機)を覆うカバーを新設し、エンジン始動時の高周波を抑制する工夫をした。

 こうして仕上がった、三菱×ヤマハのオーディオシステム。クルマの質感とのマッチングがとても良く、クルマ全体としての「世界観」が大きく変わった印象すらある。

 これが、今回の新型アウトランダーPHEV試乗で感じた、先代モデルとは「全く違うクルマ」と感じた大きな要因であると思う。

 発売日は、2024年10月31日。三菱によれば、12月16日時点で、受注台数は4600台。受注目標は月1000台。

 受注をグレード別で見ると、最上位のP Executive Packageが52%と半数を超え、次いでP(33%)、G(11%)、M(4%)と設定価格の高い順から続いている。

 ヤマハのオーディオ構成比は、標準装備を含んで上位グレードのUltimateが56%、Premiumが44%。

 価格は、P Executive Packageの5人乗りが659万4500円、同7人乗りが668万5800円。

 三菱の新型アウトランダーPHEV。国内外のプレミアムブランドに十分に太刀打ちできる、三菱らしさを強く感じる次世代SUVである。

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桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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