【英国】極右思想の政党に巨額献金を検討

 12月中旬、マスク氏は英国右派ポピュリスト政党・リフォームUKのファラージ党首とトランプ氏の私邸で会談した。17日、ファラージ氏はBBCに対し、マスク氏がリフォームUKに献金を検討していると認めた。

 献金額は最大1億ドルにも達すると言われており、AP通信は実現すれば英国の政治献金として過去最大となる見込みと報じている。英国では外国人が直接政党に献金することは禁じられているが、英国企業を通じてなら可能だ。マスク氏の場合、Xの英国法人を通じて献金できる。

マスク氏は英国の極右政党リフォームUKのファラージ党首とトランプ氏の私邸で会談した(写真:Laura Brett/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 一部報道によれば、献金は同党の反移民といった極右思想への支持もさることながら、スターマー英首相に対するマスク氏の私怨がからんでいるとされる。マスク氏は今夏、英国各地で起きた暴動事件に関連し、同国で内戦は避けられないと根拠のない投稿をした。

 これに対し官邸は、発言には正当性がないと一蹴。それ以来、マスク氏によるスターマー首相への攻撃が激化した。暴動に対応した警察が移民より白人をより厳しく取り締まったなど、極右過激派によるデマも垂れ流し続けた。

 議会の特別委員会は来年、暴動で偽情報拡散を助長したXの役割についてマスク氏を公聴会に召喚し、証言させようと試みている。これにマスク氏は、「米国民に対する検閲と脅迫について(英議員らの方が)米国に召喚されるだろう」とやり返し、英議員らによる自身への召喚に無視を決め込む模様だ。

 マスク氏とリフォームUKには、様々な政治信条の共通点がある。マスク氏は自身が米国で一時不法移民であった疑惑があるにもかかわらず、ブレグジット推進派のファラージ氏同様、不法移民排除の立場を取る。人員を大幅に削減し、小さな政府を目指すことでも一致している。

 さらに、これも私怨が多分に影響しているとみられるが、そもそも民主党支持者だったマスク氏が右派や極右に傾倒するようになったのは、実子の一人から絶縁されたことに起因しているとされている。今年20歳のこの実子は、現在ではトランスジェンダーの女性であり、2年ほど前、法的に父親の姓と自分の名前を捨てたことで注目された。

 今年になってマスク氏はこの実子に関して「息子は死んだ」としたうえで、Woke(いわゆる「意識高い系」に類似したスラング)ウイルスに侵されたからだと発言している。多様性を尊重する風潮を嘲笑したり否定したりするアンチWokeの立場も、右派ポピュリストのファラージ氏に共通するものだ。

 この発言に対し実子は、自身の成長過程においてマスク氏は父親として不在であったと反論している。そして、幼少期に女子のようにふるまったり声も高かったりした自身に対し、マスク氏はなじったり怒りをぶつけてきたりと父親失格だったと打ち明けている。自らの振る舞いは棚に上げ、悪いのは社会だと責任転嫁する姿勢は、マスク氏の極端な人柄を表す一例と言える。

 英国ではマスク氏による右派政党乗っ取りを阻止すべく、政治献金に関する規制を早急に強化するよう求める声が高まっている。