“マスク大統領”にもあおられたトランプ氏の弱点

 さて、米連邦議会は上院、下院とも共和党が勝利したが、昨年(2024年)12月中旬に起きた「つなぎ予算」を巡る一連のゴタゴタ騒ぎでは、トランプ氏が共和党に影響力を行使する上で、制約を受けるような「弱点」も潜んでいることが明らかになった。

 日本ではトランプ氏が意外に「弱い」ということは解説されていないため、この話には解説が必要だろう。超党派の「つなぎ予算案」を取りまとめようとした段階で、「これには国民の反対の声がある」と、突如イーロン・マスク氏がXに投稿する形で議論に割って入った。

つなぎ予算案にXで反対運動を起こしたイーロン・マスク氏つなぎ予算案にXで反対運動を起こしたイーロン・マスク氏(写真:©Algi Febri Sugita/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 このマスク氏の動きにあおられたのがトランプ氏で、「政府の支出を議会で決定する際、借金上限の引き上げを条件にすべきだ」と公に主張したため、最初の超党派案の合意は白紙になってしまった。

 続いてトランプ氏が支持した案が出されたが、これには民主党に加え、共和党議員からも35人を超える議員が反対票を投じたため撃退された。結局3回目の案への投票で、米下院と上院は政府閉鎖を避けるための新たな法案を可決したが、この法案にはトランプ氏が求めていた借金上限の引き上げは含まれなかった。

 これは2025年に始まるトランプ2.0での立法活動でも直面しかねない懸念材料が多分に含まれていた。

 一連の動きは、トランプ氏が“マスク大統領”(民主党や共和党の一部が揶揄してそう呼んだ)のパフォーマンスにあおられたという事実と、トランプ氏自身が共和党全体を意のままに動かすには限界があることの2つを浮き彫りにした。2025年に共和党が直面することになる税制改革や国境政策の議論において、今回起きた出来事は決して良い予兆ではない。

「政府効率化省」のトップに指名したイーロン・マスク氏(右)と話すトランプ次期大統領「政府効率化省」のトップに指名したイーロン・マスク氏(右)と話すトランプ次期大統領(写真:ロイター=共同通信社)