早くからトランプ勝利を予測した“詐欺師たち”の思惑

 これらの数字から見ることができる評価は、「ブルーウォール」と呼ばれるミシガンとウィスコンシンの2州は本来民主党が強い州だったので、今回は動かなかった民主党支持者がたくさんいたという事実だろう。

 そこにペンシルベニアを加えたラストベルトの3州はいずれもハリス氏が勝てた州だったということだ。事実、この3州を取れば選挙人は44人獲得となり、最終的にハリス氏は選挙人を270人、トランプ氏は268人獲得し、ハリス氏の勝利だった。

 民主党のジェニファー・オマリーディロン選挙対策本部長は、投票の2日前の段階で「全ての州で50+1ポイントを用意した」と言っていたが、実際に過半数の51%を取るにはウィスコンシンで2.3ポイント、ミシガンで2.7ポイント足りず、ペンシルベニアでは2.3ポイント足りなかった。それだけディロン氏の読みが甘かったということだ。

米大統領選での敗北を表明するハリス氏米大統領選での敗北を表明するハリス氏(2024年11月7日、写真:共同通信社)

 これは有権者の中の誰に投票するか決まらない人々が、結局、最後の最後にトランプ氏に投票したか、あるいは投票を棄権したことを意味している。何カ月も前から決まっていたデータではなく、今回の結果はまさに投票日当日に決まったと言っても過言ではない。早くから予測できたと言う人間は詐欺師の類いである。

 選挙直後、鬼の首を取ったかのように、「なぜマスコミはこの結果(トランプ大勝)を予測できなかったのか?」と、トランプ氏の勝利をあおった記事を何本も目にした。共和党に忖度してすり寄る専門家や、中にはロシアのプーチン大統領の存在を重くみせたい専門家の存在すら確認できた。

 これはおそらく第1次政権で保守強硬派の「オルバン主義」(当サイト記事『第2次トランプ政権が一筋縄ではいかないこれだけの理由、新閣僚候補6人の「厄介な人物像」とは?』参照)に巻き込まれたトランプ氏を利用して、ウクライナ戦争をロシア側の勝利に導きたいとする政治的な臭いが感じられる。

2024年7月、モスクワで記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(右)とハンガリーのオルバン首相2024年7月、モスクワで記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(右)とハンガリーのオルバン首相(写真:ゲッティ=共同通信社)

 いずれにせよ、今回の大統領選はハリス氏が勝つ可能性も十分にあった。ここをしっかり理解しないと、この先の米政権がどんな形になるかの読みを間違えることになるだろう。情報というのは、入ってきた情報のどこかが欠けて捻じ曲がっていないか、冷静に見ることが大事なのである。

ハンガリーのオルバン首相(左)とイタリアのメローニ首相ハンガリーのオルバン首相(左)とイタリアのメローニ首相(写真:LaPresse/共同通信イメージズ)