台湾・鴻海精密工業の劉CEO(右)は「ポスト・スマホ」時代を見据えてEV戦略などを加速させている。左は米半導体大手NVIDIAのフアンCEO=2023年撮影(写真:Walid Berrazeg/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ )

ホンダ・日産を経営統合へと突き動かした台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の日産買収計画。その責任者の一人が、日産で副COO(最高執行責任者)まで務めた関潤氏だ。鴻海のEV事業の最高戦略責任者で、他社との提携戦略も担っている。日産買収に動いているとされる関氏の狙いとは。インタビューなどを通じて関氏に取材をしてきたジャーナリスト・井上久男氏が、鴻海サイドの「腹の中」を解説する。(JBpress)

(井上 久男:ジャーナリスト)

 日産自動車の買収を狙っていることが明らかになった台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業。同社はEMS(Electric Manufacturing Service=電子機器製造サービス)で、米アップルのスマートフォン「iPhone」を生産してきたことで有名だ。

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 現在の経営トップである劉揚偉会長兼CEO(最高経営責任者)は、「ポスト・スマホ」(スマホ後)の世界でも成長を加速させる戦略を打ち出している。それが、AI(人工知能)、半導体、通信の3つのコア技術に重点投資し、EV(電気自動車)、ロボット、ヘルスケアの3つを次世代ビジネスと位置付ける経営方針だ。

鴻海が開催した「テックデイ」に登場したホンハイの劉揚偉CEO(写真:井上久男、2024年10月8日、台湾の台北市にて)

 最近では、世界中で開発競争が激化している生成AIに欠かせない米半導体大手エヌビディアのAIサーバーの生産も担っている。ちなみに、エヌビディアの株式時価総額は日本円で500兆円ほどもあり、トヨタ自動車の10倍を超える。