圧倒的な低コスト化でEV事業を拡大

「我々は、徹底的に無駄を省き、開発費やリードタイムを圧縮し、低コスト化を実現させていくのが戦略です。伝統的な大規模自動車メーカーとの違いは、その点にあるといっても過言ではありません。後発で参入するので、こうした強みを『武器』にEV事業を拡大させていきたい」

 関氏によると、日本企業4社が鴻海のEVを見て興味を持っているという。その際に、「鴻海がまさかクルマをつくれるとは思わなかった」と驚かれ、すでに2社とは契約に向けて動いているという。

 関氏は「手ごたえを感じています。今のEVは価格が高い、利益率が低い、充電時間が長いという3つの弱点を抱えている。EVへの取り組みは、伝統的な大手自動車メーカーにとっては負担になりつつある」と指摘。そのうえで、「しかし、EVの比率はいずれ高まっていく。素早く完成度の高いEVを鴻海が開発し、顧客である自動車メーカーのブランドで提供すれば、市場は拡大していく」と見る。

 鴻海は、ホームマーケットは台湾としたうえで、重要市場を日本・米国・インドと位置づける。関氏は「日本でのビジネス展開を最重要課題と考えている」と語った。23年時点で、日本は新車販売に占めるEV比率がまだ2%、インドも2%で米国は8%。こうした地域では伸びる余地はまだあると見ているのだろう。

 加えて関氏は、EVの産業構造は今後変化すると見ており、それが鴻海にとって追い風になるとの見通しも立てている。

 それは、自前主義から分業体制への変化だ。