関氏が語る鴻海の強みとは

 鴻海は24年5月、世界最大の変速機メーカー、独ZFの子会社であるZFシャシーモジュールに50%出資。この狙いについて関氏は「先方から声がかかった。鴻海としてもシャシー(車台)については追加投資できる環境にないため、ZFの力を借りる。顧客がドイツのBMWやベンツといったプレミアムブランドであり、筋がいいと判断した」と説明する。

 鴻海は19年にEV事業への進出を表明、台湾自動車大手の裕隆汽車と合弁企業を設立し、裕隆のブランドでEVを販売している。裕隆は台湾で日産とも販売面で提携している。

鴻海のEV「モデルC」。これを改良して北米市場に投入する計画がある(写真:井上久男、2024年10月8日、台湾の台北市にて)

 また、21年に鴻海はEVで乗用車タイプの「モデルC」を発表。先述したように鴻海のEV事業のスタイルはCDMSであり、自社でブランドは持たない。ブランドを持つ自動車メーカーにベースとなる「モデルC」を提供し、自動車メーカーがそれをカスタマイズした後に、製造は鴻海が一括で請け負うことを目指している。

 このビジネスモデルだと、鴻海が直接的に最終消費者にEVを売ることはない。それでも、自動車メーカー同様の技術力や品質管理力が求められる。

鴻海のEVバス「モデルU」(写真:井上久男、2024年10月8日、台湾の台北市にて)

 関氏自身が鴻海に移って驚いているのが、意思決定と実行の速さだ。鴻海はクロスオーバー型EVの「モデルB」、ピックアップトラック型の「モデルV」など様々なタイプのEVを発表しており、今後、強化したい領域の一つに中小型のEVバスがある。今回のテックデイでも「モデルU」として初披露した。

「今年の1月にマイクロバスのEVをやろうと提言したら、約8カ月で形にしてきた。細かい点に課題はまだあるが、かなり完成度が高いものを生み出し、量産のためのコストをはじき出せる段階にまで来ている」と関氏は語る。

 さらにこう説明した。