ルノー・三菱自とのアライアンスの整合性は取れるのか

 日産は2020年以降、ピックアップトラック「フロンティア」、量販SUV「ローグ(日本名エクストレイル)」、クロスオーバータイプのBEV「アリア」、高級クーペSUV「インフィニティQX55」など、重要なモデルを北米に投入したものの、多くは旧型モデルより販売を落とす有り様だった。

 日産が改革しなければならないのはまず商品力、そしてその魅力を後押しするための販売・サービス品質の向上なのだ。

 そこでホンダとの提携である。なぜその提携が重要かというと商品力の改革、言い換えると早期のフルモデルチェンジによる仕切り直しには多額の費用がかかるからだ。

 前述したように日産は研究開発に大きな投資を行ってきており、その額は近年では年間6000億円を超えている。研究開発で今も昔も一番お金がかかるのは商品である新車開発なのだが、日産はトヨタ、フォルクスワーゲン、ダイムラーなど世界の巨大グループに引けを取らない技術力を維持しようとして、「かなりの額を先端技術分野に割り振ってきた」(日産関係者)という。

 商品力向上のために新車開発を強化するとなると、相当のリソースを新車開発に向けなければならなくなる。が、そうすると今までせっかく頑張ってきた先端分野のスピードが鈍り、将来的に得たいと考えていた果実を得られなくなる。そのジレンマを解消する相手としてホンダはうってつけの存在だ。

戦略的パートナーシップの検討を開始すると発表した日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長(2024年8月1日、写真:共同通信社)

 ホンダはホンダで潤沢な研究開発投資を行う土壌のある企業だが、2010年代前半から中盤にかけてAI、二足歩行ロボット、創エネルギーといった先端分野の投資をバッサリとリストラしたことが災いして「それらの分野でのシーズ(将来への布石となる萌芽的技術)が急激に失われた」(ホンダ技術系OB)という弱みがある。両社がうまく結託することができれば相当のシナジー効果を得られる可能性が高い。

 だが、解決しなければならない問題がある。ルノー・日産・三菱自動車アライアンスとの整合性を取れるかどうかだ。

 最も手っ取り早いのは日産がホンダと株を持ち合ってアライアンスに引き込むことだが、提携後に日産の業績が急速に悪化したことに関してはさすがのホンダも引いていることだろう。日産との協業で技術力を補完したいという思いは変わっていないだろうから、日産としてはホンダの信用を失わないような復興計画を早急に出す必要がある。