『装甲騎兵ボトムズ』のATはなぜリアルか
──『装甲騎兵ボトムズ』では、アーマードトルーパー(AT)という人型機動兵器を、主人公が消耗品として次々乗り捨てていくことが特徴的だと書かれています。他のアニメのように何度も修理して使うスタイルと、脱ぎ捨てていくスタイル、どちらがより現実的だと思われますか?
高橋:それは、その兵器の値段によるでしょうね。戦闘機であれば、損傷して帰ってきたら修理が必要です。その間に、敵が来たら別の飛行機に乗って出撃します。そう考えると、アーマードトルーパーの乗り捨て式もあり得ると思います。でも、軍艦のように値段の高いものは、次々と代替はできません。
数年続く戦争で同じスーパー兵器が使われ続けるということは、現実にはまずあり得ません。整備やオーバーホール(分解)は、機械である限り必要になります。そういう意味では、使い捨て式のアーマードトルーパーはリアルです。
──人型機動兵器というものは、やがて現実の戦争でも使われていくと思いますか?
高橋:四脚歩行の輸送用マシンがアメリカで開発されたことがあります。バージニア州にある米国陸軍輸送博物館に展示されています。車輪が通れないところを進むためにこうした歩行型の輸送マシンを開発しましたが、実際には使い物にならなかったようです。
いわゆるロボット兵器のように二脚となると、より難しくなります。たとえば、銃を撃つとしたら、人型のロボットでは相当難しい。
──安定感がないということですか?
高橋:そうです。撃った時に反動を抑えなければならない。車両などでも固定して撃たないと安定しない。そうであれば、現状、使われている戦車のほうが使える。
二脚ロボットが有効な条件があるとしたら宇宙空間かもしれません。作業や格闘をするとなると、パイロットが動かしやすい形は人型だと思います。でも、AIを教育して戦闘させるならば、人型である必要もありません。
──「現実の戦争は政治と一体で、政治プロセス抜きで戦争を語ることはできないけれど、SFアニメの場合、どこまで政治的背景や政治状況に踏み込んでいるかは作品ごとに違いがある」という趣旨のことを書かれています。
高橋:軍事力は政治の道具で、政治が決めた枠の中で使用されます。ですから、そうした描写があるかどうかですね。政治家が登場するだけでは、政治を描いたことにはなりません。政治的な決定により、軍人が動いたり、翻弄されたりする描写があるかどうか。そのことについて論じています。