ヤマトとガンダムはSFアニメの何を変えたのか?

高橋:ヒーローが必殺技で悪を退治して世界を救うというそれまでのお決まり形式ではなく、よりリアルに戦争が描かれるようになったという点が大きな変化だと思います。

『宇宙戦艦ヤマト』にはロボット兵器は登場しませんが、戦闘機や戦艦、量産された兵器がたくさん出てきます。また、それ以前の『ゲッターロボ』や『マジンガーZ』などとの決定的な違いは、とてもよく描き込まれた戦闘場面の面白さでした。

 そうした側面をさらに突き詰めていったのが『機動戦士ガンダム』です。このあたりが、新しいスタンダードを作ったのだと思います。

──ガンダムでは、人型ロボット「モビルスーツ」が登場します。ロボットの中に人が入って、あるいはロボットのコントロールルームに特定の人物が入って戦闘するのは、日本のSFアニメの1つの伝統のような印象があります。

高橋:巨大ロボットアニメの初期の作品である『鉄人28号』では、パイロットはロボットに搭乗しません。ラジコンで外から操作するのです。

『マジンガーZ』になると、コックピットが小型の飛行機になって、飛んで行ってロボットと合体して操縦するようになりました。

 常にパイロットとロボットがセットになって動くのは、3機が合体する『ゲッターロボ』や5機が合体する『超電磁ロボ コン・バトラーV』『超電磁マシーン ボルテスV』などから。ただ、この場合はパイロットは1人ではありません。

 1人の人間がコックピットに入って操縦する形態にどこから切り替わったのか、明確には分かりませんが、『機動戦士ガンダム』ではそうなっている。

 つまり、最初から中に1人が搭乗するスタイルがスタンダードだったわけではなく、だんだんそういう形式になっていったのです。『機動戦士ガンダムZZ』では合体しますけれどね。

 おそらく、1つのロボットに対して1人のパイロットという形態は、主人公の成長を描くという意味でも、兵器としてのそれらしさを描くという意味でも現実的なのでしょう。実際の戦闘機もそうですから。

 ただ、戦闘機は2人乗りもあるし、戦車は3人ないし4人乗りです。『伝説巨神イデオン』などは複数人が入って操縦しますが、これはこれで戦車のような形態と考えると、現実的だと言えます。