MI6が主張する、ウクライナ支援をやめてはいけない理由
他方、政府がEU加盟交渉の中断を発表したことから大規模な抗議活動の続くジョージアでも、与党「ジョージアの夢」が圧勝した10月の議会選挙において、偽情報の拡散など、ロシアによる選挙介入の疑惑が持たれている。親欧州派のズラビシュビリ大統領は今回の選挙を「ロシアの特別作戦」と、ロシアがウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と呼ぶことに重ねて皮肉っている。
MI6のムーア長官は先の演説で、ウクライナを支援しない場合にかかるコストは、現状よりも「無限に高くなるだろう」と話している。プーチン氏がウクライナで勝利すれば「中国がその影響を検討し、北朝鮮はより大胆に、そしてイランはさらに危険な存在となるだろう」と示唆した。
ムーア氏は、次期駐米大使候補として名が挙がっているという。演説の内容は、ウクライナにかかる軍事支援の額に繰り返し不満を述べてきたトランプ次期大統領を意識したものとも見られている。
一方、独ショルツ首相は12月2日キーウを電撃訪問し、6億5000万ユーロ相当の追加支援を発表した。ハイブリッド戦でロシアによる侵食が着々と進んでいるかに見える欧州はこの戦いを制し、ウクライナを支え切ることができるのだろうか。
楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。