相次ぐ不自然な事件、「単なる偶然はあり得ない」

 独外相のいう「ハイブリッド」攻撃とは、伝統的な軍事作戦に加え、サイバー攻撃や偽情報の拡散、選挙介入、破壊工作などといった“非正規”の作戦を組み合わせたものを指す。ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来、このハイブリッド攻撃を欧州諸国に対して仕掛けているという。

 米ポリティコなどの分析では、ロシアによる昨今のハイブリッド戦の目的は、欧州社会を不安定化し、ウクライナへの軍事支援を削減させることにあるとしている。

 11月30日、英テレグラフ紙は、ロシアが関与したとされる欧州各地での破壊工作を地図にまとめた。今年5月、ポーランドの大規模ショッピングモールがほぼ消失した火災や、独兵器製造大手「ラインメタル」のCEO暗殺計画、スペインで起きたロシアの亡命パイロット銃殺事件なども含まれている。

 この上、11月17日にはリトアニアとスウェーデン、18日にはドイツとフィンランドを結ぶ2本の海底通信ケーブルが、相次ぎ断線している。

 独ピストリウス国防相は19日、「犯人」を特定しないまま、断線は破壊工作の可能性が高いと指摘。ベーアボック外相も、小包の発火やサイバー攻撃など直近で立て続けに起きた事案を挙げ、ケーブル断線についても「単なる偶然ではあり得ない」とした。

NATOのルッテ事務総長(写真:ロイター/アフロ)

 NATOのルッテ事務総長は12月3日、ブリュッセルで開かれたNATO外相会合に先駆けた会見で、同盟国が団結して、ロシアや中国による破壊工作などへの対応を強化すると話した。

 ロシアは、西側諸国が主張する一連の破壊工作などへの関与疑惑を全て否定している。

 英国秘密情報部(MI6)のリチャード・ムーア長官は11月29日、ロシアによる「脅威的で無謀な」破壊工作を欧州で最近確認したと発言。ロシアが核をちらつかせウクライナ支援をやめさせるよう脅しているとも言及した。こうした攻撃や言動は危険、かつ無責任の域を越えるとも糾弾している。