イスラエルのネタニヤフ首相に対する国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状発行が、意外な方向に波紋を広げている。主導したICCのカーン主任検察官にセクハラ疑惑が持ち上がっているのだ。逮捕状請求はカーン氏自身の疑惑への関心を逸らすためではとの指摘があるほか、イスラエルが疑惑のリークに関与しているといった「謀略説」が飛び交う。ICCへの国際的な信頼を揺るがす事態で、パレスチナでの大量虐殺の罪を追及するという「正義」にも傷がつきかねない。
(楠 佳那子:フリー・テレビディレクター)
国際刑事裁判所(ICC)がイスラエルのネタニヤフ首相らに、戦争犯罪や人道に対する犯罪の容疑で逮捕状を発行したのは11月21日のこと。パレスチナ自治区・ガザ地区において、民間人を意図的に攻撃したほか、戦争の手段として飢餓を利用するといった戦争犯罪を犯したと信じるに足る合理的な根拠があるという。
アルジャジーラの集計によると、イスラエル軍の攻撃によりガザ地区やヨルダン川西岸で昨秋から11月27日までに4万5000人以上のパレスチナ人が犠牲になっている。その3分の1以上が、子供だという。
逮捕状は、ネタニヤフ政権の蛮行に国際社会がNOを突きつけた象徴と言える。ところが、今年5月にこの逮捕状を請求したICCの主任検察官に対し、最近深刻なセクハラの疑いが再浮上し、逮捕状の請求自体にも疑念が持たれている。セクハラ疑惑が最初に浮上した時期が逮捕状請求の直前であり、イスラエルを支持する勢力による主任検察官への中傷キャンペーンではないかという疑いも取り沙汰されている。
一体、何が起きているのか。