疑惑が再燃、仕掛けたのは誰か

 ガーディアンによれば、この女性は当初、カーン氏の行動について二人の同僚に相談しただけで、立場上ICCへの通報などは考えていなかったという。それにもかかわらず話をした数日後、本人の全く知らないところで、カーン氏の行為がICCの独立監視機構に伝わったのだという。

 当時、女性は正式な申し立てはしないとし、調査もされなかった。だが英タブロイドのデイリー・メール紙によれば、10月中旬になって匿名のXアカウントからこの件に関して内部告発が行われ、疑惑が再燃したのだという。

 ガーディアンによれば、こうした一連のカーン氏のセクハラ疑惑に色めき立ったのが、米保守系経済紙で親イスラエル派でもあるウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)だ。WSJは10月23日、編集委員会のオピニオン記事においてこの匿名の内部告発を根拠として、カーン氏が今年5月、ネタニヤフ氏らへの逮捕状請求を行ったのは、自身のセクハラ疑惑から目を逸らすためだったという「仮説」を展開している。

 カーン氏は10月25日、Xで声明を発し、セクハラ疑惑を否定している。30年以上にわたる職務経歴の中、誰からもこうした告発を受けたことはないとした。

 その上で「私と国際刑事裁判所は、幅広い攻撃と脅威にさらされている」とも記している。攻撃を行っているのが誰とは明言してはいないものの、暗にイスラエルの関与を指摘しているものと思われる。

 しかしガーディアンはその2日後、カーン氏は女性と1対1での接触を避けるようにとの勧告に従わず、複数回にわたり面談や電話で女性に告発を否定するよう説得したと独自に報じている。カーン氏は、これについても完全否定している。

 セクハラ騒動は、更に混乱を極める。