ただ、ライブでの生歌披露はなかった。録画したライブ映像が流されたのだった。世界のトップアーティストに生歌を披露させる資金力は、K-POP界にはまだないということなのかもしれない。

スマホで動画撮影ができる

 K-POPの現場に行っていつも驚くのが、スマホでステージを撮影する観客が相当数いることだ。この日、入場前にカメラの有無を確かめられるが、スマホでの撮影が可能だった。実際に、多くの観客がスマホで動画を撮影していた。

 K-POPは日本と比べて、著作権の概念がかなり緩いと感じる。それがSNSやYouTubeでの爆発的な拡散を可能にした側面があるので、実はステージを撮影するファンの行為は推奨されてすらいるのだ。

 InstagramやX、TikTok、YouTube上では、ファンが撮影したK-POPアイドルの動画を簡単に見つけることができる。

 日本のライブ現場ではあり得ない光景だ。撮影をしているファンはスタッフから注意されるだろうし、周りから白い目で見られる。何より、ファンが撮影した動画は、運営側や他のファンから違反報告をされ、すぐに消されてしまうだろう。

 K-POPの事務所は、ファンが撮影した動画の影響力を理解しており、動画をいちいち消して回るようなことはしない。著作権的にはグレーどころかアウトな無断撮影すら許容している。SNS上での拡散、それによるファンの増加は密接に関係しているので、事務所はあえてファンを規制するようなことはしないのである。

 K-POPアイドルのファンにとって、「推し」のアイドルが輝くステージを撮影し、それをSNS上で拡散する行為は、非常に重要な意味を持っている。「推し」のかっこいい、可愛い姿をスマホで撮影し、それを拡散して「いいね!」をもらう。いわゆる「推し活」においては、スマホでの動画撮影は中心的な活動となっている。

学生に感想を聞いた

 1日目、筆者が韓国語を教えている大学の女子学生(20)が見に来ていたので、MAMAの感想を聞いてみた。

 彼女は小学5年生の頃、K-POPにハマったという。きっかけはBTSだった。今回のMAMAは2回目。ENHYPEN(エンハイプン)やTOMORROW×TOGETHER(トゥモロー・バイ・トゥギャザー)がお目当てだ。

 中学3年生の頃から、韓国語を勉強し始めた。独学で文字(ハングル)を覚え、「推し」が韓国語を話す動画を見て勉強した。現在は週に4コマ、韓国語の授業を受けている。また、K-POPアイドルのダンスをカバーするサークルに所属している。

 今の目標は、韓国語能力試験の最高級に合格することだという。将来はK-POPに携わる仕事をしたいと考えているようだ。

 学生は「推しが受賞している場面を見れて嬉しかった。MAMAは演出が豪華で、めちゃくちゃ楽しかったです」と興奮気味に話してくれた。