トランプ氏の「敵」を成敗する姿勢に溜飲を下げるMAGA信奉者

 1900年頃の米国はたしかに黄金時代だった。1901年にUSスチールが誕生するなど、米国は重化学工業の飛躍的発展をテコに超大国にのし上がった。

「米国例外主義」という言葉が国民の間に広がっていた。自国に利益をもたらす場合を除いて米国は国際法に縛られるべきではない、という考え方だ。

 トランプ次期政権も自国の経済的利益などに合致しない限り、第2次世界大戦後に自国が主導してつくりあげた国連、GATT(現・WTO)、国際通貨基金(IMF)といった世界システムを遵守しないだろう。米国がこのような行動に出れば、第2次世界大戦後の世界システムが大きく揺らぎ、終焉を迎える可能性すら十分にある。

 それ以上に心配なのは、米国社会の分断がさらに深刻化することだ。

スキンヘッドに「MAGA」の入れ墨、危ない感じがヒシヒシと伝わってくる?(写真:ロイター/アフロ)

 ラトニック氏が「真のMAGA支持者だけで政権を固める」と述べたように、トランプ氏は信頼関係を築いた「忠臣」を登用する姿勢を鮮明にしている。忠臣たちがこれまで敵視してきた組織のトップに任命される例も少なくない。政権移行チームが軍高官の「解任リスト」を作成したとも噂されている。

 トランプ氏が憎き「敵」を成敗しようとする光景を見るにつけ、多くのMAGA支持者たちは溜飲を下げているに違いない。

 敗北したハリス副大統領は「トランプ氏が大統領に返り咲くことで暗黒の時代が始まる」と総括したが、米国には既に深い闇が存在しており、成長から取り残された多くの人々が闇の中で見つけた星がトランプ氏だったというのが正しい認識だと思う。

 ロイターが11月19日に公表した調査によれば、トランプ氏が就任から100日間で優先的に取り組むべき課題として「インフレ」を挙げた有権者の割合は約35%と最も高かった。次いで移民対策が30%、「国際貿易や関税に力を注ぐべきだ」との回答は1%にとどまった。トランプ氏に肯定的な評価を示したのは44%、否定的な評価を下したのは51%だった。

 トランプ氏は移民問題について一定の成果を挙げるだろうが、インフレは頭の痛い問題だ。関税政策などのせいでインフレが再び加速するリスクが高いからだ。

 暮らしぶりが一向に改善しないことに不満を募らせるMAGA支持者たちが、「積年の恨み」を晴らす行動に出るのではないかとの不安が頭をよぎる。