男女の密会だけでなくデリヘルの場にも
・水茶屋(たんに茶屋、茶店)
地面に床几(しょうぎ)を並べただけで、周囲は葦簀(よしず)掛けの簡易な作り。葦簀掛けなので、「掛け茶屋」とも言った。
客は気楽に立ち寄り、床几に腰をおろして煙草を一服し、茶を飲んで休憩した。団子や田楽などを出すところもあった。簡易な作りなので、日が暮れると店を閉めて帰宅する。
街道筋や行楽地、神社仏閣の境内や門前などにあり、現代人が思い描く茶屋はまさにこうした店であろう。現代のカフェや喫茶店に近い。
・料理茶屋
二階建ての本格的な造りで、事実上の料理屋だった。二階の奥座敷は男女の密会に利用された。
・出合茶屋(であいぢゃや)
男と女の密会の場所。現代のラブホテルに相当する。江戸の各地にあったが、とくに上野の不忍池(しのばずのいけ)の周囲に多かった。
図2は、窓の外に蓮の池が見える。蓮は不忍池を象徴しており、絵師の歌麿は「ここは出合茶屋で、この男女は密通ですよ」と示していることになろう。
・陰間茶屋(かげまぢゃや)
陰間とは、男色の相手をする男娼である。つまり、陰間を置いているところが陰間茶屋だが、客はあげない。陰間茶屋はあくまで陰間の独身寮兼事務所である。
客はいったん料理屋などにあがり、陰間茶屋から陰間を呼出した。現在の性風俗で言えば、派遣型(デリヘル方式)に近い。
料理屋で酒や料理を楽しんだあと、客と陰間は奥座敷で性行為をする。料理屋の費用がかかるため当然、客にとっては女郎買いよりも負担が大きかった。