生成AIは感情労働の敵か味方か

 今回の研究では、実際のCSRにPro-Pilotを使ってもらい、無礼なクライアントと対話するシミュレーションを行った上で、このAIアシスタントがどこまで役立つかを評価してもらったそうだ。

 その結果、Pro-Pilotを使うことでCSRが負の感情を抱え込まず、顧客に対して冷静でいられること、また作業に集中する助けとなることが確認されたという。

 こうした精神的な支えがどこまで効果を発揮するかは、オペレーター個人によっても差があるだろう。上司や同僚、家族や友人などから労いの言葉をかけられても、響く場合もあれば逆効果になる場合もある。その意味でPro-Pilotが、感情労働による心身の疲労の即効薬になるというわけではない。

 ただ、具体的な顧客とのやり取りに基づいて、そのやり取りが行われているまさにその瞬間に、「この怒りはあなたに向けられているのではない」という言葉をかけてくれるというのは、確かにCSRの心の負担を軽くしてくれる可能性がある。

 また、昨今の状況からリモートワークの導入が促進されたことで、職場内で感情労働者のケアを行うのが難しくなってきている。しかも、効率化が求められる中では、個々の感情労働者の状況に応じたサポートを付けるのも難しい。

 その中でカスタマイズされた対応を自動的に行ってくれるAIアシスタントは、企業にとって魅力的な選択肢となるはずだ。

 では生成AIは、感情労働者にとって救いの光となるのだろうか。Pro-Pilot単体で見ればそうかもしれないが、残念ながら生成AI全体で捉えると、逆の可能性があることも明らかになっている。