東ドイツ:禍根は統一後、半~1世紀続く
2024年韓国の若者たちの、将来への懸念を聞きながら私は、ここ35年ほどの間にドイツが直面した事態や今に至る禍根を思い出していました。
ドイツの場合、東西分割は冷戦中後期の28年間で、双方に家族を残してきた人たちが手を結び合って「統一」が成し遂げられました。
それでも、東ドイツ出身者は「オスティ(Osti)」と呼ばれ、就職差別その他、様々な社会的デバイドが現在も残っているのは否めない事実と思います。
また単に差別があるだけではありません。
「東」で生まれ育った人の中には、物心づく頃、秘密警察「シュタージ」による監視が前提の社会で、密告その他、様々な非人間的環境の下で育ってしまったため、それが社会常識の前提となっている人も・・・残念なことですが、現実に存在しています。
私自身、そうした東出身者の困った行動で被害に遭った経験がありますので、残念ですが、人事採用などで東ドイツ出身者に微妙な偏見があることに「ゆえなし」とは言い難い現実を知っています。
20世紀後半、東ドイツで生を受けた人たちは、1940年代後半からスターリニズムのソ連の影響下で永続した警察国家状態に加えて、1933年成立のナチス政権以来、一貫して非民主主義的な体制下で市民生活を続けてきました。
その残滓が2024年になってもいまだ色濃く残っている。
「苛政は虎より猛なり」と言いますが、その禍根は民衆生活の意識の底に沈殿して、50年、100年と悪弊を残し続けているわけです。
さて、このような観点から「北朝鮮」出身者がソウルに大挙してやって来る状況を考えたら、どのようなことが懸念されるでしょう?
南北朝鮮は東西ドイツの28年を超えること、余裕のダブルスコアであり、すでに四半世紀、正味75年に及ぶ分断です。
もはや膠着状態が前提で生まれた人が一通りの社会生活を終え、その間に生まれた次世代、さらにはその子供である次々世代にバトンタッチされつつある。
1950年に生まれた人が1975年に子供を作り、その子供が2000年にまた子供を作れば、その子つまり北朝鮮で生まれ育った3世代(以上)が、すでに社会の大半を占めていることになります。
そのような老若男女が、なりふり構わず南のソウルを目指して殺到したら一体何が起こるか?