ソウル一極集中からソウルパンクへ

 南北統一以前、韓国からの北朝鮮への「経済援助」だけでも、その原資は結局、韓国国民の税が賄うわけですから、援助が増えるなら必然的に増税となります。

 いま現在、十分苦しい韓国各世代の家計の本音として、そんな余計なことはしてくれるな、と思っている。

 それが、親北政策を推進した文在寅前大統領が支持されなくなった明確な理由だと、ソウルの学生、院生たちは断言していました。

「統一」には、それを準備するための様々な施策にもお金はかかるわけで、それらに関する財政出動が押し寄せてくるなら、それだけで十分迷惑だと、韓国青年層は考えているようです。

 さらに加えて、仮に統一が実現すれば、困窮した北朝鮮大衆の多くは「韓国」というよりその都市部、端的に言えば経済的に豊かな「ソウル近郊」の「京畿道」に集中して押し寄せる可能性が高いだろう、との予測もなされています。

 いま現在の韓国でも、ソウルへの一極集中と地方の過疎化は深刻な問題になっています。

 日本以上に都市部への人口集中が問題化しており、現在の韓国ではこうした人の動きを制御する制度を持ちません。

 北朝鮮では国民の移動や就労に厳しい制限が設けられ、不自由な生活を強制されているわけですが、そのタガが外れ、北朝鮮全土から「老人、子供、主婦層」などを除く出稼ぎ可能な世代がソウルに集中したら・・・。

 考えるだに戦慄する「恐慌」が懸念されるわけで、こうした韓国側の現実から考えて「南北統一は不可能」という意見が、全世代集計の4割に達しているのが2024年の現状です。

 現在の北朝鮮に故郷がある、近しい親戚が北に残っているといった世代はすでに80歳を超え、現在の30~40代にとっての「北韓(ブッカンと発音するようです)は、同じ言葉を話し同じ民族ではあるけれど、あれこれない混ぜにしないでほしい隣の別の国」として、完全に定着。

 21世紀生まれでは、さらにその割合は増加の一途をたどるだろうといった消息を聞かされ、改めて複雑というよりは暗澹たる意識を持たざるを得ませんでした。