トランプ氏側近から「GDPの3%は必要」との声

「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は、国際協調に必ずしも積極的ではありません。前回の大統領就任後には、気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」から離脱。バイデン政権になって復帰したものの、今回の当選で再び離脱する方針を決めています。

 トランプ氏の前大統領時代、対日関係はどうだったでしょうか。

トランプ氏はどのような要求を日本に突きつけてくるのだろうか(写真:AP/アフロ)

 トランプ氏は前回の大統領就任直後、オバマ政権時に日米で立ち上げに尽力した環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を早々と決めました。2020年には日米貿易協定で米国産農産物の関税引き下げに成功しています。

 2期目の大統領に就任すれば、石破首相も対米関係で緊張を強いられることは必至です。とくに、安全保障と通商問題が大きな柱となりそうです。

 大統領1期目の2019年6月、トランプ氏は記者会見で日米安全保障条約を「不公平な合意だ」と評し、不満をあらわにしました。「もし日本が攻撃されれば、われわれは日本のために戦う。米国が攻撃されても日本は戦う必要がない」という理由からです。

 米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約は、日本にとって防衛政策の基盤ですが、トランプ氏は日本に駐留する米軍経費の負担を増やすよう要求しました。当時、日本政府の在日米軍駐留経費(思いやり予算)は毎年1900億円程度で推移していましたが、トランプ氏の要求は80億ドル(約1 兆2000億円)まで引き上げよという内容でした。

 バイデン大統領になってこうした高圧的な要求は影を潜めましたが、トランプ氏が再任すると再び増額を要求するだろうと予想されています。また、トランプ氏の周辺からは「日本は防衛費を増やせ」と求める声も聞こえてきます。そうなれば、米国が日本の防衛に使う費用が少なくて済むからです。

 岸田文雄前首相は2022年12月、日本の防衛費をGDP(国内総生産)の2%に引き上げるため、2027年度までの5年間で防衛費を総額43兆円とすることを決めました。財源は増税です。しかし、トランプ氏側近からは「GDPの3%は必要だ」という声まで出ているのです。このような要求を突きつけられれば、日本政府は対応できるのでしょうか。