しかし、待っていてはいけません。緊急で血液の流れを良くする治療をすれば、回復する可能性があります。一方、治療が遅れれば失明して回復しないことがあるのです。痛みもなく、生活もできるので、いまひとつ悲壮感がなく、受診が後回しにされがちなのですが、「明日でいいや」ではなくて、緊急でかかるべき病気だと覚えておいてください。
目の奥が痛く、片目が見えにくくなっている
緑内障発作は、緑内障によって、眼球の内側から外側にかかる圧力(眼圧)が急激に上昇した状態です。正常な眼圧は10~20mmHg程度ですが、これが40〜50mmHgへと激しく上昇します。その上昇によって目の奥が痛くなり、片目も見えにくくなります。しかし目の奥に痛みが生じるので、緑内障発作は、目の病気というよりは脳の病気や片頭痛と勘違いされることがあります。また痛みにより嘔吐をすることもあり、腸の病気とも勘違いされがちです。
この病気も夜に起こりやすいので、何とか我慢して朝まで様子を見る人がいます。また、夜間に救急受診はしたものの、痛みが強いために「片目が見にくくなっている」ということに気づかず、医師にそのことを告げなかったために眼科の病気という診断に至らないことがあります。
緑内障発作も、早急に治療をすれば元に戻りますが、眼圧が高い状態がしばらく続くと、それにより視神経がダメージを受けて失明します。また、「緑内障をもともと持っている人がなるもの」と思われがちですが、そうでもありません。何も指摘されたことがない人であっても、ある日突然なるものなのです。
温かい涙が流れるが痛みはあまりない
3つ目の眼外傷(眼球破裂)はどうでしょう。眼球破裂というと大きな痛みが生じるようなイメージがありますが、実際は異なります。眼球が破裂していても、痛みはあまりありません。目が全く見えなくなるわけでもなく、普通に歩けます。
眼球が裂けると、目の中の「房水」という水分が徐々に外に出てきて、温かい涙が流れていきますが、ある程度は見えるので、そのまま様子を見てしまう方が結構いるのです。
私が外来で見た患者さんの多くは、眼球が破裂していても普通に歩いて眼科に来ていました。よくあるのは、芝刈りやのこぎりなどを使っていて、その破片が目に飛んで裂けてしまうケースです。早急に治療をすれば視力が回復することもあります。しかし、しばらく経過してしまうと、眼球の中が外と触れるために、菌が目に入って感染症を引き起こし、失明してしまうのです。