選手の権利確保の観点で始まったメジャーのFA制度

 一方、海の向こうのMLBでは、1976年に「フリーエージェント(FA)制度」が導入されることになった。

 これは前年、モントリオール・エクスポズのデーブ・マクナリーとロサンゼルス・ドジャースのアンディ・メッサースミスという2人の投手が、球団の契約条件を不服として、契約を結ばないままプレーをし、そのオフに「球団側に自身を拘束する権利はなく、他球団との契約交渉は自由にできる」と主張したのが始まりだ。

 MLBが委嘱した第三者調停委員会は2人の主張を認め、2人は「フリーエージェント」であるとした。これを連邦地裁も支持したことでMLBのFA制度の導入が決まった。

 MLBでは永年、選手は球団の厳しい支配下に置かれ、クビになるかトレードされない限りは自由に球団を移ることはできなかった。

 また1965年に導入されたドラフト制度も、アマチュア選手が自由に球団を選択する権利を奪うものだった。これに対し「反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)」に抵触すると訴訟が起こされたが、MLBがチームの入れ替えがないクローズドリーグであり「戦力均衡」が必要との観点から、裁判所がこれを却下した。

 FA制度の導入は、これまでの圧倒的に球団が有利な契約制度に対する選手側からの異議申し立てだった。そして、ドラフト制度などで入団した選手が一定年限プレーすれば「移籍の自由が与えられる」という意味で「ドラフト制度の補完」という側面を持っていた。