日米地位協定は今改定すべきか?
──石破首相は日米地位協定の改定をひとつの目標に据えています。トランプ氏は世界中にある米軍をなるべく撤退させたいという意向を語っています。「日本における米軍のプレゼンスを小さくする」という意味では、両者の意向は一致するようにも見えます。
渡辺:地位協定の話は、日本の中では比較的理解が得られることで、国会でも通りやすいテーマだと思います。一方で、その主張がアメリカの議会で通るかどうかは疑問です。
アメリカの考え方からすれば、たとえば、アメリカの軍人が犯罪をおかしたとしても、それを裁く軍事法廷が日本にはありません。また、日本の法律で裁くのはおかしいという議論があります。「日本の司法が公正なものなのか」という懸念も持たれています。
北朝鮮や中国の脅威があるこの状況で、本当に今そこを見直す議論をすべきなのかという疑問もあります。
そもそも日米同盟がどうなっているのかと考えると、アメリカは日本が攻撃されたら守るけれど、日本はアメリカを守るわけではありません。集団的自衛権も、ごく限定的にしか認められていない。そうすると「地位協定を改定」するのではなく、「もっと日本の負担を増やすべきだ」という議論にもなりかねない。
こうしたことを議論するためには、日本の政権基盤が安定していなければなりません。安倍元首相とトランプ前大統領の仲は良好でした。それも、安倍政権が選挙に強く、政権基盤が盤石だったからトランプ前大統領も真剣に受け止めたという側面があります。
それに対して石破政権の現状は盤石とは言えません。しかも、来年7月には参議院選挙も控えています。そのへんまで見て、アメリカは日本への対応の本気度を調整してくると思います。
長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。