平林の“悔し涙”が「うれし涙」に
國學院大にとって絶好の展開になったが、7区の平林清澄(4年)は青学大・太田蒼生(4年)になかなか追いつくことができない。どうにか14.8kmで並ぶも、16.1kmで太田がペースアップ。最終的にはスタート前と同じ4秒差でタスキをつなげた。
「山本が4秒差でつないでくれたタスキ。最後は『自分で決めてこい』『上原に楽をさせよう』という指示をいただきました。そのなかで追いつくことができず、記録的にも篠原に負けるというWパンチを食らいました。悔しいレースになり、泣きました……」
4年連続の7区に自信を持っていた平林だが、勝負を決めることができず、区間賞争いでも駒大・篠原倖太朗(4年)に10秒届かない。主将の責任とエースのプライドから涙がとまらなかった。
絶対エースで逆転はできなかったが、最終8区の上原琉翔(3年)がすぐに青学大に追いつくと、9km過ぎに引き離す。そのまま初優勝のゴールに突き進んだ。
「あの位置で渡してくれたのは、みんなの頑張りがあったからこそ。区間順位(9位)はダメダメでしたけど、最後は勝ち切ることができて良かったです」
上原がフィニッシュテープに飛び込むシーンを移動中のバスで観た平林は“悔し涙”が「うれし涙」に変わっていた。
「國學院大らしい全員駅伝の勝利かなと思います。特定の選手が頑張ったわけではなく、ラストの粘りで次のランナーが走りやすい位置でタスキを渡せた。駅伝の鉄則だと思うんですけど、自分だけではなく、次の走者のことを考えて、力を振り絞る。8人全員が役割を果たしたからこそ総合力で勝てたと思います」(前田監督)
箱根駅伝に向けては、全日本のVメンバー8人以外に箱根経験者が6人も残っている。選手層には絶対の自信を持っているが、「箱根で勝つには往路をどう戦うのか。誰を人選して、どこに持ってくのか。そこがポイントかなと思います」と前田監督は最終決戦を見つめている。
そして大会MVPに輝いた山本は「箱根が終わるまでが『歴史を変える挑戦』です。現状に満足することなく、箱根でもしっかり自分の仕事をして、優勝して、笑って終わりたい」と話す。全日本に続いての“初優勝”と史上6校目となる“駅伝3冠”に向けて、國學院大の歴史を変える挑戦は続く。