そこにネット社会がやってきた。布施相場を検索すれば、葬儀社などの情報サイトから目安となる金額が表示される。だが、それも基本は東京都の布施相場であり、地域によってはまったく参考にならない(ネットの布施相場は高額傾向にある)。ネット情報がかえって、混乱を生じさせている側面は否めない。

「1件あたり30万円」は妥当か

 では、日本におけるお寺への布施相場はどれほどなのか。興味深いアンケート結果が出た。まずは、実態から紹介する。

設問 「あなたが過去に受け取った葬式一式(枕経、通夜、葬儀、戒名)のお布施平均額はどれくらいですか(感覚値で)」

【僧侶向けアンケート】
5万〜10万円未満 6.9%
10万〜15万円未満 3.4%
15万〜20万円未満 19.2%
20万〜30万円未満 33%
30万〜40万円未満 17.2%
40万〜50万円未満 10.8%
50万〜100万円未満 7.9%
100万円以上 1.5%

 回答にバラつきがあるのは、布施の相場感は地域(あるいは僧侶、宗派)によって大きく異なるからである。たとえば沖縄県では葬式一式の布施額は5万〜8万円と全国で最も低い水準だ。山陰地方もアンケートの回答項目の「5万〜10万円未満」に該当する範囲内である。他方、東京都では沖縄の5〜10倍か、あるいはそれ以上の水準である。断っておくが、布施を多くもらっている都市部の僧侶は堕落し、地方の僧侶が清貧、いうことでは決してない。

 しかしながら布施の平均額が「50万円以上」が、およそ1割を占めているのが驚きである。さすがに、世間一般の金銭感覚からは逸脱した額であろう。本当に檀信徒の理解は得られているのだろうか。

 では、僧侶と一般人の金銭感覚の差異についてみていきたい。布施を受ける側と渡す側の「尺度=金銭感覚」が同等であれば、問題は生じにくいはずである。