小規模な葬儀を求める流れがあり、業界でも対応する動きはあるが…(イメージ写真:アフロ)

公正で透明性の高い価格形成。そうした「市場原理」が通用しないと言われるのが葬儀業界だ。コロナ禍で家族葬が市民権を得て、僧侶の派遣サービスも広がるなど、葬儀業界は今、大きな変革期を迎えている。一方、地方などでは依然、檀家制度をベースにした葬式仏教が幅を利かせている。この2年間で2人の親族を亡くした筆者が、弔いの現場で経験したこと、感じたことをリポートする。

(森田 聡子:フリーライター・編集者)

広がる「家族葬」や「オンライン葬儀」

 コロナ禍を契機に葬儀の在り方が変化してきている。

 感染防止のため大勢の人が集まることが難しくなり、一時は都道府県をまたいだ移動も制限されたため、家族や近親者など少人数で行う「家族葬」が拡大した。パソコンやスマートフォンを使ってリモートで参列する「オンライン葬儀」を取り扱う会社も増えているという。

 一方、檀家寺を持たない人の増加を背景に、葬儀や法要のためにその日限りの僧侶を安価に手配するサービスも出てきた。

 葬儀の在り方だけでなく業界自体も変わってきたことを強く感じたのは、5月に急死した義母の葬儀を都内で執り行った時だ。

 6年前に亡くなった義父は葬儀社と生前契約を交わし、会場はもちろん、棺や祭壇、遺影、供花など全て自分で決めていた。一方、義母は何の指示も残していなかった。

 ただ、義父の葬儀の打ち合わせに立ち会った際、「お葬式にこんなにお金をかけるのはもったいない。もっと質素でいいのに」と漏らしていた経緯もあり、電話で数社に見積もりを取った上で、最もコストパフォーマンスの良さそうな会社に依頼した。