リスクの高い仕組債をめぐる投資トラブルが増えている。低金利が長引く中、“見かけ”は高金利だが、実質手数料が高いとされる仕組債は、売り手の金融機関にとって「うまみ」が大きい金融商品として普及が拡大した。しかし、一部の債券で預入資産を大きく減らしたことから高齢者や投資初心者層を中心に苦情が続出。金融庁や業界団体が金融機関に自主規制を促している。7月からは日本証券業協会による新しい仕組債販売のガイドラインが導入されるが、果たして顧客本位の販売が定着するのか。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
相場のひずみを突き高いリターンを狙うが…
仕組債の販売をめぐり、証券取引等監視委員会は6月9日、金融庁に対し千葉銀行とその傘下にあるちばぎん証券、武蔵野銀行の3社に行政処分を求める勧告を行った。
千葉銀行と武蔵野銀行はちばぎん証券に顧客を紹介したり、ちばぎん証券が扱う金融商品を案内したりしている。ちばぎん証券による仕組債販売については、他社を大きく上回る数の苦情が寄せられており、自主規制機関の日本証券業協会から度重なる注意を受けていた。
にもかかわらず、ちばぎん証券では「苦情の多くは一方的なもの」と受け止め、適切な措置を取ってこなかったとされる。証券取引等監視委員会は「十分な説明をせずに投資経験の浅い顧客に販売したのは法令違反」と判断し、今回の勧告に踏み切ったようだ。
国債や社債などと異なり特別かつ複雑な仕組みを持つ仕組債は、本来はプロ向けの金融商品だ。スワップやオプションなどのデリバティブ(金融派生商品)を取り込むことで、クーポン(利息)や償還金、償還期間などを自由に設計できるようにしている。
元来、リスクを背負い相場のひずみを突くことで高いリターンを求めるような商品性だけに、狙い通りに行かないとリターンは市場平均をはるかに下回るばかりか、場合によっては投資元本が大きく毀損することもある。