イーロン・マスク氏もトランプ支持
「国境を封鎖し、移民の侵入を阻止」「米国史上最大の強制送還作戦を実行」し住宅費の高騰を抑えると唱える。2017年のトランプ減税を延長して「労働者への大幅減税とチップへの非課税」を実施、法人税を1%引き下げて20%に、さらに15%への引き下げ案も浮上している。
電気自動車(EV)大手、米テスラの最高経営責任者(CEO)イーロン・マスク氏は気候変動に関する見解が異なるにもかかわらず、1億1800万ドル以上を寄付するなど、トランプ氏支持に回った。トランプ氏が技術革新や人工知能(AI)開発の規制を緩和すると期待しているからだ。
大手資産運用会社のCEOもトランプ氏の経済運営に理解を示すようになっている。トランプ氏が大統領に就任した時、中国製品に懲罰的な関税を課し、自由貿易に終止符を打った。この路線はバイデン氏によって踏襲され、拡大された。
ニューヨーク・タイムズ紙の世論調査でその差は13ポイントから6ポイントに縮まったとは言え、有権者はハリス氏よりトランプ氏の経済政策に軍配を上げる。選挙戦最終盤の10月22日、ハリス氏は連邦政府の最低賃金を時給7.25ドルから15ドル以上に引き上げるとぶち上げた。
貧困層を繋ぎ止めるためだ。ハリス氏は経済財政政策に関する経験を欠き、複雑な経済問題を管理する能力について疑義が唱えられている。経済より社会正義優先のハリス氏は「経済こそが重要なのだ、愚か者」というマントラにのみ込まれつつある。
【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。