忘れていけないのは超長期金利の上昇

 そして第三に、普段あまり言及されない超長期金利の上昇も、市場参加者は配慮する必要がある。

 図2は、日米の超長期金利の代表である30年国債と、国債利回りの指標とされる10年国債の利回り差を示したものである。

【図2】日米の30年国債と10年国債の利回り差
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 この利回り差は、超長期にわたる短期金利の期待値を織り込むだけでなく、将来の財政状態を示唆すると指摘されることもある。政府の信用状態が悪化すれば、元本償還までの期間が長いほどリスクプレミアムが付与されるからである。

 つまり30年国債利回りが10年国債利回りを上回る差が大きければ大きいほど、国債を発行する政府や通貨の信用状態に対して市場参加者が低く評価している傾向を示唆するわけである。

 国家としての信用度の低下は、相対的に通貨価値に対する疑念も呼び起こす。さらに通貨の減価は、インフレ率上昇の可能性を高めるため、将来的な短期金利の上昇を想起させるだろう。いったん政府信用の悪化が意識されると、負のスパイラルに陥るように、なかなか抜け出せなくなるだけに質(たち)が悪い。

 米国でも、大統領選挙後をにらんで、減税や財政拡大により財政状態が悪化する可能性が指摘されはじめている。

 実際に2022年末に0%水準だった利回り差は、0.3%程度まで上昇してきているのである(2024年9月現在)。

 また、財政拡張による経済成長の底上げは、やっと落ち着いてきたインフレ率を再び上昇させる可能性が懸念される。その場合は、9月に利下げに転じたばかりの米国の政策金利がさらに低下し続けるという期待が剥落しかねない。

 市場参加者にとっては、日本だけでなく米国までもが、朝令暮改のように金融政策を変転させるのであれば、落ち着いているわけにはいかないだろう。