10月27日に投開票された衆院選挙で自民・公明の連立与党が大きく議席を減らしました。政治基盤の不透明感が高まるとみて株式市場は冷え込むとの見方が強かった中、翌28日の日経平均株価の終値は前週末比691円(1.8%)高の3万8605円と、大幅に反発しました。衆院選、そして米国の大統領選を踏まえ、今後のマーケットはどう動くのか、第一生命経済研究所の藤代宏一主席エコノミストに聞きました。
(河端 里咲:フリーランス記者)
与党大敗も株価は大幅高、立役者は国民民主党
──衆院選投開票の翌日、日経平均株価は大幅に反発しました。
藤代宏一・第一生命経済研究所主席エコノミスト:翌日の株式市場での大幅高は驚いた人も多かったのではないでしょうか。市場では翌日は「日経平均株価1000円安もありうる」といった警戒感もあったと思います。
28日前場の寄りでは続落で始まったものの、すぐに切り返し、前週末からの上げ幅が700円を超える場面もありました。
政治の不透明感から衆院選までに膨らんでいた売りに対する反動が大きかったことに加え、円安も株価の支えになりましたね。28日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=153円88銭近くと7月末以来3カ月ぶりの水準まで下落し、円安が進みました。
今回の与党の大敗で、拡張的な財政政策や金融緩和の維持などを掲げる国民民主党との連立政権の樹立が意識されたことが背景にあります。国民民主党の玉木雄一郎代表などは、7月の日銀利上げについても痛烈に批判してきた経緯があり、「円安・株高」のイメージが強い人です。国民民主党が連立を組む可能性や政策ごとの協力の行方も含めて、玉木代表の影響力に今のマーケットは注目していると思います。
そもそも石破総理は自民党総裁選の9人の候補者の中で、株式市場の目線で見ると一番警戒していた人で、広く想定されていた高市早苗氏からの落差が激しかったと思います。ただ今回の選挙を経て、政権基盤が弱まったことで、支持率回復などを狙った拡張的な政策に向かう可能性もあります。
衆院選が運んできた短期的なインパクトとしては、金融緩和路線継続という見方が自然です。
──今後の日銀の政策金利の見通しにも変化は出てきますか。
藤代氏:長期的に見ると、日銀の政策金利は2025年末までに1.0%へ到達するという予想は変えていません。
次の春闘で連合は賃上げの目標を「5%以上」とする方針のほか、中小企業には「6%以上」と昨年と同水準の賃金上昇が想定されています。賃金・物価がかなり上昇しているなか、政策金利が0.5%前後のままというのは相当な違和感で、さすがに日銀も利上げをしていかなければならない状況になると思います。
日本はシルバー民主主義(有権者に占める高齢者の割合増)、シルバー経済になっています。円安で輸入物価が上がり消費が減少する、という現状に鑑みると、逆に金融引き締めで円高を進め、輸入物価を減少させる方が消費の活性化につながるというルートも考えられなくはないと思います。