出会いの発端はティッシュ配りのアルバイト

 この女性のことも良く知っているというジャーナリストの吉田隆氏に解説してもらった。吉田氏は野崎氏の自伝のゴーストライターを務めるほどドン・ファンから信頼され、野崎氏宅で寝泊まり出来る唯一の男性であったという。

「ドン・ファンには複数の愛人がいました。年に1、2回しか会わないとか数年に1回という愛人もいます。相手は人妻であったり、ワケありの女性だったりとさまざまですが、ドン・ファンと会えば、“お小遣い”を貰うことができるので、女性の方から連絡をしてくることも多かったようです。

 今回証人として出廷した女性も、いわゆる愛人の一人です。ドン・ファンの死後、私が書いた『紀州のドン・ファン殺害 「真犯人」の正体』(講談社+α文庫)の中で、女優の松嶋菜々子さん似なので『菜々ちゃん』という仮名で触れた女性です。

 彼女やドン・ファンから聞いた話では、菜々ちゃんが東京で大学に通っていた時代に、ドン・ファンが東京で手掛けていた貸金業の広告入りティッシュを配るアルバイトに応募して知り合ったようです。ドン・ファン本人によれば、ティッシュ配りに美人の女子大生アルバイトを起用したことで貸金業は大きな宣言効果をあげ、受付に客が押し寄せるような状況だったそうです。本当かどうか分かりませんが……」

新幹線の車内で携帯電話で通話する野崎幸助氏。スマホも所持していたが、愛用していたのはもぱらガラケーだった(撮影:吉田 隆)
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 野崎氏の貸金業の舞台は東京都内、それも丸の内や霞が関の周辺だった。というのも、大企業に勤めるサラリーマンや霞が関の公務員ならば、職場が担保になり、借り逃げする者はいないという読みだった。その読みは当たった。美人女子大生が差し出すポケットティッシュを受け取ったエリートサラリーマンや国家公務員のうち何人かは、金策のため野崎氏の会社に電話してきた。