タイミーがタイミーを指導するタイミーの現場

 筆者は、眼鏡で小太りの30代くらいの男性とペアになった。

「イトウ君、新人さんに教えてあげて」

 筆者と同じ「タイミー」白ヘルをかぶったイトウ君は、ベテランタイミーのようだ。イトウ君は神経質そうな早口で説明する。

「あー、僕たちが仕分ける荷物は全部『本町』宛の荷物なんすけどぉ、本町は1~4丁目まであるんですが、1丁目1~19番地の荷物はこのカゴ車に入れて、20~25番地があっちのカゴ車に入れて、でもセンチュリーガイアっていう建物だけはこっちのカゴ車で。でも2丁目は番地で分けずに午前配達がこっちで、午後配達がこっちで……」

 仕分けルールには規則性がなく、「グズでノロマな」中年は混乱する。

 荷物はカゴ車10台分、全部で500個くらいあるだろうか。缶ビールやペットボトルが入ったダンボール、ゴルフバッグは20~30キロはありそう。片手で持てる小箱やペラペラの封筒もある。

 ノロマな筆者と比べ、イトウ君は5倍速の俊敏さで仕分けていく。重い荷物もイトウ君が担当してくれた。先輩タイミー、生産性高い。ノロマな新人でごめんなさい(涙)。

 頭にかぶっている使い回しの「タイミー」白ヘルから、誰かの整髪料と頭皮と汗の混ざった変なニオイがする。ニオイと格闘しながら、500個の荷物が仕分け終わる頃には、夜が白々と明けていた。

「イトウ君、次はバーコードやっといて。新人さんにも教えて」

 ユニフォーム姿のおじさんが指示。バーコードリーダーの使い方を伝授するのも、イトウ君だ。

「丸投げかよ。この操作はイレギュラー対応が多いんだから、社員がやれよ……」

 愚痴るイトウ君。そりゃ愚痴りたくもなるだろう。教育係を任されたところで、彼の時給が上がるわけではない。

 日雇いのタイミーが、同じ身分のタイミーを指導する現場。日本の人手不足、ここに極まれりである。