シニアより都合のいいタイミーが支える現場

 この運送会社では、すべての配送センターでタイミーさんが導入されているわけではないようだ。ただ、この会社で現場スタッフの採用を担当していた男性に話を聞くと、こんな答えだった。

「今後はタイミーさんを増やしていく方向で動いていると聞いています。そのほうがコストも抑えられますし」

 この会社ではタイミーが導入されるまでは、仕分け作業はシニアを積極的に雇用する流れがあったという。

「10年くらい前ですかね。国の要請もあって65歳以上のシニアを派遣やパート従業員として採用するようになりました。でも、シニアはミスやケガが多く、労災申請も毎月のようにあって、それはそれでリスクなんです」

 では、今後は都合のいいタイミ―さんが優先され、シニア採用は先細りしていくのだろうか。

「シニア採用は継続していくと思います。ただ売り上げが下がると真っ先に切られるのはシニアです。『70歳以上は全員解雇』など、リストラは単純に年齢で区切って行います」

 リストラの手間が省ける点でも、シニアよりタイミーさんのほうが、雇用側には都合がいいに違いない。

 今の労働現場は、働く人を「リスク」や「コスト」でしか判断しなくなっている。スポットワークの普及で、この流れはさらに加速していくのだろうか。

 午前8時、作業終了。日陰の仕事を終えたタイミーさんは白ヘルを脱ぎ捨て、昼の仕事に出かけていく。残された「タイミー」白ヘルの山が、骸骨のように見えた。

【お知らせ】
2024年11月1日(金)19時より国立市公民館主催「図書室のつどい」で、本連載をまとめた『副業おじさん』(朝日新聞出版)について、著者の若月澪子がトークさせていただきます。入場無料!是非お越しください。詳細はこちら

若月澪子(わかつき・れいこ)
NHKでキャスター、ディレクターとして勤務したのち、結婚退職。出産後に小遣い稼ぎでライターを始める。生涯、非正規労働者。ギグワーカーとしていろんなお仕事体験中。著書に『副業おじさん 傷だらけの俺たちに明日はあるか』(朝日新聞出版)がある。