Hさんは娘を大学に通わせるため、深夜のカラオケボックスで復業していた(写真:共同通信社)*写真はイメージですHさんは娘を大学に通わせるため、深夜のカラオケボックスで副業していた(写真:共同通信社)*写真はイメージです

 最近、おじさんが意外な場所で働く姿を見かける。給料が上がらない。本当に年金もらえるの? AIに仕事を奪われる……! 将来の不安から副業を始める中高年男性が増えているのだ。おじさんたちはどんな副業をしているのか、どれくらい稼いでいるのか、あるいはまったく稼げていないのか。組織をはみ出し、副業を始める全力おじさんの姿をより深くレポートする。(若月 澪子:フリーライター)

二度と上がることのない給料

 東京大学の学費の値上げが議論を呼んでいる。物価高騰や人件費の上昇のため、値上げに踏み切る大学は全国の国公立大、私立大に及んでいる。

 学費を払う親や学生が悲鳴を上げるのは当然だ。

 そもそも、すでに大学生の2人に1人は、大学に通うために何らかの奨学金を受給している状態である。副業の取材をしていても、「子どもの学費」が副業の動機になっている父親にはよく出会う。

「大学には行った方がいい。『大卒』は死ぬまで消えない資格ですから。でも、長女が大学に行っているときはキツかった」

 こう話すのは、社会人から小学生まで3人のお子さんがいる北陸地方在住のHさん(46)。学校のPTA活動などにも積極的に取り組んでいる、優しく穏やかなパパだ。

 Hさんは昨年まで、地元の私立大学に進学した娘のために、深夜のカラオケボックスで副業をしていた。

 Hさんの本業は中小の運送会社の物流倉庫で働くフォークリフトオペレーター。若いころは長距離トラックの運転手をしていたが、過酷な労働環境に音を上げ、30代半ばで現在の仕事に変わった。

 しかし、その後は給料がほとんど上がらなくなったという。現在の年収は380万円ほど、妻も正社員として働いていて、世帯年収は650万円程度だ。

「会社にも交渉しましたが、今の給料で頭打ちです。僕の仕事は作業員系で出世はありませんから、昇給したとしてもクソみたいな金額です」

 Hさんの長女が卒業までにかかった学費はおよそ450万円。彼女は返済義務のある貸与型奨学金を借りて進学した。