ラブホ代わりの「ブリンバンバンボン」

 Hさんが働いていたカラオケチェーンの深夜は、今もワンオペなのだろうか。東海地方の店舗で働く、私立大学4年のI君にも話を聞いた。

「ウチのチェーンをSNSで調べれば『ワンオペ ヤバい』みたいな書き込みが出てきますよ。でも、実態はその水準を余裕で超えてくるヤバさです」

 I君が働くのは、平日の18~22時と週末の22時~朝5時。I君は最初の研修で、社員から1カ月間付きっきりで「訓練」を受けたが、「今思えばワンオペ前提の教育だった」という。

「バイトを始めて2カ月目からは、深夜帯はほぼワンオペになりました。厨房で揚げ物をするときは火のそばを離れたくないのに、注文や会計に呼ばれると行くしかない。接客、調理、清掃、機械の故障まで対応して、疲れ過ぎて現場で吐きながら働いたこともあります」

 さらにI君をイラつかせるのは、カラオケボックスをラブホ代わりに使う若いカップルだ。

「カラオケあるあるなんですが、深夜は若いカップルたちが部屋を占領しちゃうことがあります。誰も歌なんて歌ってない。そんなときに待合室の酔ったサラリーマンから『まだぁ?』って責められる。最悪っすよ」

 それでもI君がカラオケボックスを辞めない理由は、Hさんと同じだ。

「貸与型奨学金を280万円借りています。在学中に返還する分は利子がかからないので、少しでも卒業前に繰り上げ返還しておきたい。バイト漬けです。自分のところは田舎なので、時給高めのバイトはほかに選択肢がなくて」

 I君の深夜の時給は1350円。

「寝坊して単位を落としたこともありますが、お金もけっこう貯まりました。就職も決まり、今はようやく落ち着いてきたところです」

 貸与型奨学金は「大学のサラ金」と揶揄する声もある。血反吐を吐いてでも手に入れなければならない「大卒」というタイトルは、なんと恐ろしく高額な買い物なのだろう。