トランプ勝利ならイスラエル支援拡大か

 イスラエル紙ハアレツは今年6月、前トランプ政権で大使館移転を実現させたアデルソン夫人の次の目標は、ヨルダン川西岸のイスラエルへの併合と、国土の全地域におけるイスラエルの主権を米国に認めさせることだと報じている。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、アデルソン夫人のスポークスマンはこれを否定している。

 しかし、トランプ氏はつい最近もイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行うなど、苛烈なガザ攻撃を続けるネタニヤフ政権との友好的な関係を隠そうともしていない。パレスチナ市民の安全について何度も懸念や警告をネタニヤフ政権に伝え、あつれきを生じているバイデン政権とは、あからさまに距離感が異なっている*11

*11Trump Is Desperate for Miriam Adelson's Cash. What Will She Expect in Return?(HAARETZ)

 他方、メガドナーの影響力はトランプ陣営に対してだけではない。22日には、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が、民主党ハリス副大統領を支援する団体に対し、5000万ドルの献金を行ったと報じられた。ゲイツ氏はニューヨーク・タイムズの取材に、これまでは様々な政治的立場のリーダーたちに協力してきたが、「今回の選挙は従来と異なり、米国民と世界の最も弱い立場にある人々にとって、前例のないほど重要なものだ」と話している。

 一般有権者にとっては気の遠くなりそうな巨額の献金が、米大統領選や政治を動かしている。それが民主主義のあるべき姿なのか、はなはだ疑問である。

楠 佳那子(くすのき・かなこ)
フリー・テレビディレクター。東京出身、旧西ベルリン育ち。いまだに東西国境検問所「チェックポイント・チャーリー」での車両検査の記憶が残る。国際基督教大学在学中より米CNN東京支局でのインターンを経て、テレビ制作の現場に携わる。国際映像通信社・英WTN、米ABCニュース東京支局員、英国放送協会・BBC東京支局プロデューサーなどを経て、英シェフィールド大学・大学院新聞ジャーナリズム学科修了後の2006年からテレビ東京・ロンドン支局ディレクター兼レポーターとして、主に「ワールドビジネスサテライト」の企画を欧州地域などで担当。2013年からフリーに。