(白石 拓:作家・サイエンスライター)
「30年以内に70〜80%の確率で発生」は正しいか
南海トラフ地震が発生する確率は、2024年1月現在で「今後30年以内に70%」とされます。この長期予測の大前提は、地震はくり返し起こるという事実です。海洋プレートが大陸プレートをほぼ一定の速度で押し続けている限り、岩盤のひずみにたまったエネルギーが地震で解放されても、その時点から再びひずみの蓄積が始まるからです。
一般に、同じ場所で地震が発生する間隔は、プレート境界型地震で数十年から数百年、内陸直下型地震は1000年から数万年と考えられています。長期的な地震発生確率は、このような過去の平均的な発生間隔と最後に発生した年代、発生間隔のばらつきなどのデータから計算されます。南海トラフ地震はおよそ100年程度の間隔でくり返し発生しており、最後に起こったのは約80年前の1944〜1946年です。危機は確実に迫っているのです。