ワールドシリーズに挑む大谷翔平選手(写真:UPI/アフロ)

(田中 充:尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授)

 米大リーグのワールドシリーズが、10月25日(日本時間26日午前9時8分)に開幕する。大谷翔平選手、山本由伸投手が所属するナショナル・リーグ王者のドジャースと、過去27度も世界一の称号を手にしたアメリカン・リーグ覇者の名門ヤンキースによる43年ぶりの頂上決戦だ。

 豊富な資金力を持つ東西の名門対決は、チケット価格が転売サイトで最高額1000万円を超える席が出るまでに高騰し、米メディアはニューヨーク、ロサンゼルスという全米2大都市のチームの対決を刺激的な見出しで盛り上げている。今季各リーグで本塁打と打点の二冠王に輝いた大谷選手とアーロン・ジャッジ選手によるスラッガー対決にも注目が集まる。

 ヤンキースにとって、大谷選手は2度も獲得の姿勢を示すもかなわなかった因縁の相手でもある。大谷選手がメジャー史上初の50本塁打、50盗塁(「50-50」)をマークしたシーズンを締めくくるクライマックスの行方は…

大谷の50号ホームランボール、6億3700万円

 今シリーズの話題の中心は、間違いなく大谷選手だった。前人未到の「50-50」を到達した節目の50号のホームランボールは日本時間23日、あらゆるボールの中で最高額となる439万2000ドル(6億3700万円)で落札されたばかりだ。

 大谷選手は日本時間25日早朝、翌日からのシリーズ開幕を控え、記者会見に臨んだ。

「いよいよ始まるな、と興奮しています。今までは悔しい思いの中で、テレビで見る側だったので、今年は自分がプレーできる喜びをまずフィールドで出せたらいいと思っている。ここを目指して、ここで勝つことをイメージしてやってきました。今シーズンの集大成として、このシリーズで勝って最高の終わり方ができればと思います」

 会見は午前6時50分過ぎに始まったが、ワールドシリーズを中継するフジテレビなどが生中継に切り替えて伝えた。約25分の会見は開始前からメディアの取材が加熱した。日本のベースボール専門メディア「FULLCOUNT(フルカウント)」によれば、日米だけではなく、中南米などからを含む30〜40人の記者が詰めかけた。取材の規制線を守らずに録音マイクを伸ばすメディアに、警備員が厳しく注意するなど殺伐とした雰囲気に包まれたという。

 大谷選手がメジャーに移籍した2017年オフ、メジャー20球団以上で繰り広げられた争奪戦にヤンキースも参戦。本命視する声もあったが、大谷選手が選んだのは、西海岸のエンゼルスだった。フリーエージェントになった昨季オフも、ヤンキースは獲得の姿勢を示したものの、新天地はドジャースに決まった。

 リーグ優勝41度を誇り、28度目のシリーズ制覇を狙う伝統のピンストライプには、大谷選手と同じく本塁打と打点の二冠王を獲得したジャッジ選手がいる。両リーグの本塁打王がワールドシリーズで顔を合わせるのは、1956年のミッキー・マントル選手(ヤンキース)とデューク・スナイダー選手(ドジャース)以来、68年ぶりだ。